賃貸アパートを売却するのにかかる諸費用が知りたい③【内容や注意点を解説します】
賃貸アパートの売却に必要な費用が知りたい人
「賃貸アパートの売却を考えていますが税金やその他かかる諸費用があれば知りたい。あと注意することがあれば教えて下さい。」
こういった疑問にお答えします。
✓本記事の内容
- 賃貸アパートを売却するのにかかる諸費用が分かります【内容を押さえましょう】
- 賃貸アパートを売却する上で注意すべき3つのこと
この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。
よくある質問で「賃貸アパートを売却するのに諸費用がいくらかかるか知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。
1.賃貸アパートを売却するのにかかる諸費用が分かります【内容を押さえましょう】
さまざまな費用がかかることを念頭にいれておきましょう
その①:賃貸アパートの売却に必要な費用をチェック(売却計画に必須です)
その②:譲渡所得税についてチェック(少し深掘りします)
その③:賃貸アパート売却時の控除や特例の利用について(上手に活用しましょう)
上記のとおり
賃貸アパートを売却するのにかかる諸費用が分かるようにここから詳しく解説していきます。
その①:賃貸アパートの売却に必要な費用をチェック(売却計画に必須です)
アパート売却の際は税金・費用が発生しますが、このコストがいくらかかるのかも事前に知っておくことをおすすめします。
アパートを売却した時の利益は売却代金-諸費用の手残りなので、正しい認識を持っていないと後の資金計画に狂いが生じてしまう可能性があります。
アパートを売却する際、費用としてかかってくる概要は、以下のとおりです。
〈アパート売却でかかる費用の概要〉
[印紙税]
不動産売買契約書の作成に必要な印紙のための費用です。
不動産の成約価格に応じて変動します。
また、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書においては、赤枠で囲まれている印紙税の軽減措置が適用されます。
不動産売買契約書1通につき1枚の印紙が必要となるため、以下で必要な金額を確認しておきましょう。
詳しくは、国税庁ホームページの「印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)」をご覧ください。
金額に応じた印紙を売買契約書に貼り付けて納付するようになりますが、取引によっては自分が保管する分の契約書(領収書)をコピーで済ませられるケースと、領収書にも印紙が必要、つまり上の表の2倍の額が課税されるケースがあります。
コピーで済まされるのは個人が居住目的でアパートを売買するケースです。
一方、賃貸経営しているアパートや法人・個人事業主がアパートを売却する場合は営利目的とみなされるため領収書に印紙貼り付けが必要になります。
この違いにご注意ください。
[登記費用・登録免許税]
・住所変更登記
住所変更登記の場合、引越しなどで住所が変わったわけではなく、住居表示実施などで住所の表示が変わっただけの時は、非課税となります。
登録免許税:不動産の数×1,000円
土地と建物が一つずつであれば2,000円です。
・抵当権抹消登記
売主が不動産にローンなどを利用していた場合、金融機関による抵当権が設定されています。
売主は、何の権利も付着していない状態の不動産を買主へ引渡す義務を負っています。
注意しなければならないのは、たとえローンを完済していても、抵当権登記は抹消されていないことです。
残債がなくなったからといって自然と抹消されるわけではなく、必ず所有者自身で行う必要があります。
その他に、登記上の住所と所有者の現住所が違う場合は住所変更登記、登記上の所有者の氏名が婚姻などにより現在の氏名と相違している場合は氏名変更登記を行う必要がありますのでご注意ください。
登録免許税:不動産の数×1,000円
土地と建物が一つずつであれば2,000円です。
上記のいずれの登記も該当しない場合は、売主としての費用負担はありません。
[譲渡所得税]
次のその②で解説いたします。
[仲介手数料]
アパートの売却を仲介業者に依頼する際は、仲介手数料がかかります。
これは不動産会社がアパートを売ってくれたことに対する報酬のようなもので、物件価格によって異なり、上限は以下のように定められています。
物件価格が400万円以下の仲介手数料の上限は18万円以内です。
物件価格が400万円を超えた場合の仲介の計算式は「物件金額×3%+6万円+消費税」となります。
取引額に応じて、手数料も高額になりますが、上限が法律で定められている以上、法外な金額を請求されることはありません。
また、これは上限金額であり、不動産会社によって上限以内で請求する金額は異なります。
[司法書士への報酬]
登記の手続きを依頼する司法書士に支払います。
通常は、買主側不動産仲介業者や、買主へ住宅ローンを融資する金融機関が依頼した司法書士に手続きをお願いすることとなります。
費用に関しては、事前に見積りをもらっておきましょう。
[測量費用]
隣地との土地の境を明確にする測量が必要な場合、現地での測量および測量図を作成するための測量費がかかります。
測量は測量士や土地家屋調査士など、外部へ作業を依頼するため、不動産仲介会社への仲介手数料などと別途費用を用意する必要があります。
測量の方法や作成する測量図にはいくつかの種類がありますが、アパートの売却時に必要となる測量図は主に「確定測量図」となります。
「確定測量図」とは、土地家屋調査士が土地の状況を見て、隣地を所有する方の確認・合意を得て作成する測量図のことです。正式な測量図面として効力を発揮できるため、売買契約のための書類として扱われます。
測量および測量図の作成にかかる費用としては、土地の大きさや隣地の方の状況によって変わりますが確定測量は約60~80万円となります。
[繰上返済手数料]
賃貸アパートを売却する場合、買主へ引き渡す前に住宅ローンを完済している必要があります。
一般的に、賃貸アパートの売却金等をローンの一括返済(完済)にあてることになりますが、その際に返済手数料がかかるのです。
金融機関によって異なりますが約1~5万円となります。
仲介手数料ほど大きな金額ではありませんが、事前に調べておきましょう。
[立ち退き料]
アパートの入居者を退去させた後に全て空室のアパートを売却する場合に用いられます。
大きなメリットとしては買主が投資目的だけでなく、場合によっては自らが居住することや建て替えを目的としているため、オーナーチェンジで売り出すよりも買い手がつきやすい傾向にあることです。
詳しくは「賃貸アパートの売却が知りたい②【売却方法と不動産会社選びを解説します】」をご覧ください。
ただし、立ち退き前に入居者を納得させる必要があり、正当な理由と合意が不可欠です。
話し合いで納得できなければ、売主が入居者に立ち退き料を支払い、円満に退去してもらうことを目指します。
立ち退き料の相場は、以下の2通りが一般的なようです。
- 新居の入居にかかる費用全額(保証金・敷金礼金・仲介手数料など)
- 家賃の半年~1年分
地域の慣習でも変わることがあるので、事前にしっかり確認してください。
その②:譲渡所得税についてチェック(少し深掘りします)
アパートの売却利益が出た場合、すなわち購入費(取得費)よりも売却額が大きかった場合、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は「譲渡所得×税率」で求められますが、肝心の譲渡所得は以下の計算式で算出されます。
譲渡所得の計算式は「売却価格-(取得費用+売却費用)」となります。
取得費用とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額や、購入手続きにかかった費用(仲介手数料、登記費用など)の合計額です。
建物は価値が築年数の経過により低下するので、その分(減価償却費)を差し引きます。
減価償却費の計算式は「建物購入代金×0.9 ×償却率×経過年数」となります。
余談ですが不動産の場合、木造は22年、鉄筋コンクリート造は47年と法定耐用年数が違っているため、減価償却を終えたタイミングで売却するのも一つの手です
更に、譲渡所得にかけられる税率(譲渡所得税)ですが、所有期間によって変わります。
所有期間が5年超の場合(長期所有)は20.315%の税率、5年以下の場合(短期所有)は39.63%です。
所有期間が5年に満たない間に売ると譲渡所得税の税率が約2倍になるので注意しましょう。
その③:賃貸アパート売却時の控除や特例の利用について(上手に活用しましょう)
売却時には税金や費用がかかりますが、反対に受けられる控除もあります。
アパートの売却で利益が出た場合は、譲渡所得となり「所得税」や「住民税」が課税されますが、損失が出た場合、これらは控除されます。
高額の譲渡所得税が出た時、アパート(収益物件)にはアパート独自の「特定事業用資産の買換え特例制度」があり、直接、税金を差し引くことができます。
これは不動産の買い換え時の負担を下げるために、納税を一時的に将来に繰り延べるものではあり税負担自体がなくなるわけではありませんが、一時的に免れることができ、譲渡所得にかかる税金を最大で80%まで繰り延べ出来ます。
売却時は費用がかかるだけではなく、負担を減らす方法もあるため、これらを上手に活用しましょう
この特例を利用するためには、売った物件と買換えた物件がどちらも事業用でなければいけません。
その他にも、例えば所有期間が10年を超える事業用不動産を売ったら、面積300㎡以上の不動産に買い換えないと特例が利用できないという条件もあります。
2.賃貸アパートを売却する上で注意すべき3つのこと(画像)
ここで注意すべき3つのことをお伝えします。
- その①:賃貸借契約の内容等の説明義務があります
- その②:敷金や先払い家賃の精算方法
- その③:相続登記をする必要があります
その①:賃貸借契約の内容等の説明義務があります
売主は賃貸借契約の内容等を把握しておく必要があります。
買主は、その収益不動産を買い受けることで賃料収入を得ることができますから、代金額に見合った賃料収入が得られるかは、賃貸借契約の内容等の情報により買主がその収益不動産を購入するか否かを大きく左右します。
通常、収益不動産を売却するに当たっては、各入居者との間で取り交わした賃貸借契約書に加え、賃貸借契約の内容を始めとする上記の内容が一覧表となった「レントロール」という書面を交付します。
買主に不利益な情報を説明しない場合には、売主に契約不適合責任又は説明義務違反の責任を問われるおそれが生じますのでご注意ください。
その②:敷金や先払い家賃の精算方法
賃貸注の物件を売却するときには、敷金の精算が必要です。
敷金返還義務は買主に引き継がれるので、受けとった敷金の分は、売買代金額から差し引く方法で調整をします。
たとえば4,000万円の物件で預かり敷金が100万円の場合には、4,000万円から100万円を差引き、買主から3,900万円を支払ってもらうことによって敷金を清算します。
また、受領済の家賃も買主に渡します。
所有権移転登記の日以降は賃貸人の地位が買主に移ります。
入居者から支払いされた家賃のなかで所有権移転登記の日以降の分が含まれている場合は、その分を日割り計算して敷金の調整方法と同様に売買代金額から差し引きます。
その③:相続登記をする必要があります
相続後にアパートの売却を行うためには相続登記を済ませ、アパートを一度自分の所有物としなければなりません。
相続登記とは、被相続人から相続した自宅、アパートなどの不動産の名義を被相続人から不動産を相続した相続人に変更する名義変更登記手続きをいいます。
2022年8月1日時点では相続登記に申請義務がなく、相続登記を申請するための期限はありません。
しかし、2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
しかも正当な理由なく登記や名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となります。
詳しくは「相続登記が知りたい【制度内容や自分で行う方法を解説します】」をご覧ください。
相続登記をしておかないとトラブルなどが発生した際に、「このアパートは自分のものである」という主張をすることができなくなるので、早めに手続きを済ませたほうが良いでしょう。
相続登記の際には、法務局で登記の申請時にかかる登録免許税が必要になります。計算方法は、「固定資産評価額×0.4%」です。
まとめ:賃貸アパートを売却するにも諸費用がかかります
ポイントをまとめます。
- 賃貸アパートの売却に必要な費用をチェック(売却計画に必須です)
- 譲渡所得税についてチェック(少し深掘りします)
- 賃貸アパート売却時の控除や特例の利用について(上手に活用しましょう)
- 賃貸借契約の内容等の説明義務があります
- 敷金や先払い家賃の精算方法
- 相続登記をする必要がある
賃貸アパートを売却するのにかかる諸費用や注意点を解説しました。
賃貸アパートの売却は契約した金額がそのまま手元に入るわけではありません。
売却時には費用も発生するため、それを差し引いた額が、実際の収益になります。儲けを正しく計算するには、売却時の費用も把握しておかなければなりません。
必要な費用は複数あるため、何がいくらかかるか知っておきましょう。
ということで今回は以上です。
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