相続税路線価の使い方が知りたい【計算方法や調べ方を解説します】
相続税路線価が知りたい人
「よく路線価と聞くけれど、そもそも何に使われているのか分からない。さらに計算方法や調べ方があればついでに知りたい。あと注意することがあれば教えてください。」
こういった疑問にお答えします。
✓本記事の内容
- 路線価を使った計算方法や調べ方が分かります【土地を所有している人は必見です】
- 路線価を計算する上で注意すべき3つのこと
この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。
よくある質問で「路線価の仕組みや計算方法を知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。
1. 路線価を使った計算方法や調べ方が分かります【土地を所有している人は必見です】
土地の評価額は路線価でわかります。これがわかれば相続税対策も出来るようになります。
- その①:路線価について(仕組みを理解しましょう)
- その②:路線価の計算をしてみましょう(路線価×土地の広さ)
- その③:路線価の調べ方(価額は毎年変わります)
上記のとおり。
路線価の仕組みや計算について、ここから詳しく解説していきます。
その①:路線価について(仕組みを理解しましょう)
相続税路線価は、土地についての相続税や贈与税を計算するときに使われる道路の金額です。
分譲マンションをお持ちの方も土地について敷地権があります。この敷地権の評価額についても、相続税路線価を使って評価額を計算します。
相続税路線価が設定されているのは主に「市街地の道路」で、その道路に面する1㎡あたりの土地の価額・借地権割合・地区区分などが記載されています。
この道路の路線価(金額)に対して、接している土地の面積を掛け合わせることによって土地の相続税評価額を計算します。
この相続税路線価を元に土地や敷地権の評価額を計算する方法を、「路線価方式」と呼ばれております。
相続が発生した場合、被相続人(亡くなった人)の財産が、現金や預貯金などの「価額が変動しない財産」であれば、その価額がそのまま相続税評価額となりますが、土地については「路線価方式」が相続税評価額になります。
相続税の計算には正確な財産評価が重要なため、相続財産に土地がある方は路線価の仕組みや計算方法を理解しておくべきでしょう。
その②:路線価の計算をしてみましょう(路線価×土地の広さ)
まずは、路線価の見方を説明します。
以下の図を参照してください。
「出典:国税庁 路線価図の説明 」
表の地図を見ると道路ごとに設定された路線価があり、矢印で範囲が示されています。
道路に「215D」に赤丸の表示があります。この数字の部分が路線価になります。アルファベットの部分は後で説明しますが、数字を1,000倍したものが路線価であり「215」の場合は道路に21.5万円の路線価が設定されています。
この道路に面している土地は1㎡あたりの価格が21.5万円という考え方であり、相続の際には以下の計算で相続税評価額を算出します。
土地の相続税評価額の計算式は「路線価×土地面積」です。
路線価が215(21.5万円)、土地面積200㎡の場合、相続税評価額は以下のようになります。
土地の相続税評価額:21.5万円×200㎡=4,300万円
数字に続くアルファベットは借地権割合を表しています。
AからGまで次のように設定されています。
A:90%
B:80%
C:70%
D:60%
E:50%
F:40%
G:30%
借地権割合とは土地の貸主と借主の権利の割合であり、借地権割合が大きいほど借り手の権利も大きいという考え方になります。
土地を借りている場合や他人に土地を貸している場合の土地を評価する際に使います。
その③:路線価の調べ方(価額は毎年変わります)
簡単に調べることができます。
一般的に多く使われているのが「国税庁の路線価図・評価倍率表」です。
直近7年分の路線価図を探すことが出来ますので、被相続人が亡くなってから相続税の申告をするまでに年をまたいでしまった場合には、実際に亡くなった年の路線価図を使うことも出来ます。
ただし町名やページ番号から目的地を探すには慣れないと手間に感じるかもしれません。
次にお勧めするのが「一般財団法人 資産評価システム研究センターの全国地価マップ」です。
郵便番号や住所を検索する機能がついており目的地を探しやすいです。また、相続税の路線価だけではなく、固定資産税路線価や公示価格などの他の公的土地評価情報も確認できます。
しかし、国税庁のホームページも必ず確認するようにしましょう。
相続税路線価は国税庁が、毎年1月1日時点の各道路に設定した価格であり、毎年7月初旬に公表します。
コロナ禍により路線価が減少した地域もありますが、地域によっては数年で4万~5万円上昇した所もあり、土地面積を乗じると1,000万円以上の価格差になるケースも珍しくはありません。毎年、7月になるとニュースで路線価が発表されましたと報じられます。
相続財産に土地がある方は毎年、見るようにしましょう。
2.路線価を計算する上で注意すべき3つのこと
ここで注意すべき3つのことをお伝えします。
- その①:路線価が存在しない地域があります
- その②:計算する人によって評価額が変わります!?
- その③:建物の評価額は計算方法が違います
その①:路線価が存在しない地域があります
相続税路線価が設定されているのは主に「市街地の道路」です。郊外や山間部などは路線価が存在しない地域もあります。
では、その地域での土地の相続税評価額はどのように計算すればよいのでしょうか。
ここでは「国税庁の路線価図・評価倍率表」の中にある「評価倍率表」を使います。
評価倍率表は路線価で探した方法と同じく地図の都道府県をクリックし、目次にある「評価倍率表」の「一般の土地等用」などから市区町村をクリックすると表示されます。
ちなみに路線価が設定されていない地域を倍率地域と呼びます。
倍率地域の相続税評価については倍率方式により固定資産税評価額に一定倍率を掛け合わせることにより行います。
倍率方式の相続税評価額の計算式は「固定資産税評価額×倍率」です。
その②:計算する人によって評価額が変わります!?
土地の評価額は路線価が分かれば簡単に計算できます。
しかし土地には一つとして同じ条件のものがなく、形状や道路への面し方(接道条件)によっては利用価値が上下しますので、プラスやマイナスとなる補正を加えます。
土地の形状や条件で利用価値が下がる…路線価を補正して「減額」
土地の接道状況で利用価値が上がる…路線価に補正して「加算」
「減額」となる路線価の補正は、奥行価格補正・不整形地補正・間口狭小補正・奥行長大補正・がけ地補正の5種類があります。 なお、取得した土地の形状や状況によっては、各種補正を組み合わせることが出来ます。
形がいびつな土地や間口が狭い、奥行が極端に長い・短い土地、がけ地となっている土地などは、一定の割合で減額することも認められます。
「加算」となる路線価の補正は、側方路線影響加算と二方路線影響加算の2種類があります。
評価額が上昇する場合としては、複数の道路に面している土地があります。
角地の場合、正面と裏面が道路に面する場合など、ケースごとに計算方法が決められています。
土地の評価額は、これらの減額計算により評価額を下げることが出来ます。しかし税務署側から減額してもらえることはないために納税者が自ら行わなければなりませんが、非常に難易度が高いです。よって知識や経験の差によって計算方法も変わりますし、最終的な土地の評価額が変わると言っても過言ではありません。
相続や贈与によって土地を取得された方は、必ず相続に詳しい専門家に相談をしましょう。
その③:建物の評価額は計算方法が違います
土地の場合は路線価や倍率表から相続税評価額を算出しますが、建物の場合は固定資産税評価額を基準にします。
基本的に「建物の固定資産税評価額=相続税評価額」であり、市区町村役場から毎年5月ごろに送られる固定資産税の「課税明細書」によって把握できるため計算は不要です。
固定資産税の課税明細書が見つからない場合は市区町村役場の資産税課でもらえる「名寄帳」で固定資産税評価額を確認することができます。
固定資産税の「課税明細書」は相続手続きの添付書類に使う場合もあるため、直近のものは保管しておいてください。
まとめ:路線価は土地の評価額を算出する際に使用します
ポイントをまとめます。
- 路線価の仕組みについて
- 路線価の計算をしてみましょう
- 路線価を調べてみましょう
- 路線価が存在しない地域があります
- 路線価は計算する人によって変わります
路線価の仕組みや見方がわかれば、土地の評価額も自分で計算できるようになります。
土地の相続税評価額の計算式は「路線価×土地面積」です。
倍率方式の相続税評価額の計算式は「固定資産税評価額×倍率」です。
土地の評価額は、相続の対象となる遺産総額の占める割合が大きい為に相続が発生する前に概算の計算をして相続対策も図ることもできます。
相続が発生した後は、計算を間違えるとペナルティが発生しますので、相続や贈与によって土地を取得された方は、必ず相続に詳しい専門家に相談をしましょう。
ということで今回は以上です。
これを参考に土地を所有されている方や相続により取得見込みの方は評価額がどのくらいか計算してみてください。