遺産分割協議書が知りたい④【必要書類と提出先を解説します】
遺産分割協議書が知りたい人
「遺産分割協議書を作成するのに必要な書類が分かりません。さらに作成した遺産分割協議書を使って行う相続手続きがあればついでに知りたいです。」
こういった疑問にお答えします。
✓本記事の内容
1.遺産分割協議書の作成に必要な書類と入手方法【しっかりと集めましょう】
2.遺産分割協議書を使って行う相続手続き【5つご紹介いたします】
この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。
よくある質問で「遺産分割協議書の必要書類が知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。
1.遺産分割協議書の作成に必要な書類と入手方法【しっかりと集めましょう】
労力が必要です
【必要書類】
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書と実印
- 遺言書がある場合には遺言書(自筆証書遺言書、公正証書遺言の謄本など)
- 検認を受けた場合には検認済み証明書(自筆証書遺言の場合)
- 相続放棄者がいる場合は、相続放棄申述受理証明書
- 財産目録(必須ではありませんが、あると便利です)
上記のとおり
ここから各書類の説明と入手先を解説します。
・被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
遺産分割協議書を作成する際には、被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本類(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)をもれなく集めなければなりません。
それぞれ本籍地の役所へ申請して取得しましょう。開庁時間に役所の窓口へ行くか、郵送で申請できます。
被相続人が結婚や離婚を繰り返した場合、本籍地が移転している場合などには通数が多くなりますし、一ヵ所では揃わない場合も多々あります
また、被相続人の「戸籍事項」に戸籍改正と記載されている場合、改正前の戸籍(改製原戸籍)も必要になります。
古い戸籍から新しい戸籍へ移行する際に、すべての内容が新しい戸籍に掲載されるわけではないからです。
新しい戸籍だけを参考に遺産分割協議書を作成してしまうと、実は認知していた子供がいた、などのトラブルが発生しかねません。
改製原戸籍の取得は、役所の窓口で請求できます。戸籍証明交付請求書などの作成が必用になるので、印鑑や本人証明書を持参の上、役所に相談しましょう。
戸籍謄本類(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)に漏れがあると、正しく相続人を確定できないリスクが発生します。
そうなると、有効な遺産分割協議ができません。戸籍謄本類がそろっていないと、不動産の名義変更などの遺産分割協議書にもとづく相続手続きもできません。
謄本と次の謄本類の日付が連続するように、注意しながら集めていきましょう。
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
被相続人の住民票の除票は被相続人の最後の住所地のある役所で取得できます。
戸籍の附票には、その戸籍内に入っているときの住所の履歴が掲載されています。
戸籍の附票は不動産の登記簿上の住所と現住所が異なる場合などに必要となります。本籍地のある役所で申請しましょう。
・相続人全員の戸籍謄本
各相続人の戸籍謄本が必要です。それぞれ本籍地の役所へ申請して取得しましょう。
ちなみに孫が代襲相続人として相続する場合や、親・兄弟姉妹などが相続する場合などには孫や親・兄弟姉妹などの戸籍謄本類が必要になります。
・相続人全員の印鑑登録証明書と実印
各相続人の印鑑登録証明書が必要です。それぞれの相続人の住所地の役所で申請しましょう。
もちろん印鑑登録していない相続人がいる場合には、先に印鑑登録をしなければなりません。
・遺言書がある場合には遺言書(自筆証書遺言書、公正証書遺言の謄本など)
遺言書がある場合には、遺言書(自筆証書遺言書、公正証書遺言の謄本など)を用意しましょう。
自筆証書遺言は法務局に預けられているか、自宅や貸金庫で保管されているケースが多いです。
公正証書遺言の場合、自宅や貸金庫などに「正本」が保管されている可能性があります。
正本がなくても、公証役場で検索すれば遺言書があるかどうかがわかりますし、謄本という写しを申請できます。
・検認を受けた場合には検認済み証明書(自筆証書遺言の場合)
法務局に預けられていない自筆証書遺言が遺された場合、検認を受けなければなりません。
検認は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で受けます。
検認が終了したら、家庭裁判所で「検認済み証明書」を発行してもらいましょう。
・相続放棄者がいる場合は、相続放棄申述受理証明書
相続放棄した相続人がいる場合には、家庭裁判所で「相続放棄受理証明書」を取得しましょう。相続放棄が受理された後に申請すれば発行してもらえます。
・財産目録(必須ではありませんが、あると便利です)
遺産分割協議を始めるにあたって事前に財産内容や評価額をまとめた財産目録を作成しておくと遺産分割協議を進めやすくなります。
こちらは入手するものではなく代表相続人等が作成するのが一般的です。
2.遺産分割協議書を使って行う相続手続き【5つご紹介いたします】
作成した遺産分割協議書を使用した相続手続きを解説します
【相続税申告(相続税の納税や特例を使用する場合)】
相続税申告時の基本的な必要書類は以下のとおりです。
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印済みのもの)
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
相続税の配偶者控除、小規模宅地の特例、農地の相続税猶予、免除などの特例を適用したい場合には、別途書類を用意しなければなりません。
【相続登記(不動産登記)】
相続登記には基本的に以下の書類が必要です。【遺言書がない場合】
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印済みのもの)
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 被相続人と相続人の関係がわかる戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 不動産の相続人の住民票
- 不動産の固定資産税評価証明書
【金融機関での手続き(預貯金の払い戻し)】
金融機関での預金の払い戻しをするための必要書類は、金融機関によって異なる可能性がありますが、一般的には以下のような書類が必要です。
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印済みのもの)
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本または抄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 手続者の実印
- 相続に関する依頼書、申請書(書類名称は金融機関によって異なります)
- 通帳、キャッシュカード
なお、払い戻しではなく、口座の名義変更を行う場合は、金融機関への印鑑届も必要です。
【証券会社での手続き(有価証券の名義変更)】
証券会社によって異なる可能性がありますが、一般的には以下のような書類が必要です。
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印済みのもの)
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
- 被相続人と相続人の関係を確認できる戸籍謄本類
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 証券会社所定の書類(株式名義書換申請書など)
【自動車の名義変更】
自動車の名義変更を行う場合の必要書類は、自動車の種類や評価額によって異なります。
軽自動車の場合には必要書類は少なく、簡易に名義変更ができます。
普通乗用自動車の場合、価値が100万円を超えるかどうかで書類の内容が変わります。
たとえば普通乗用自動車で価値が100万円を超える場合、以下の書類が必要です。
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印済みのもの)
- 被相続人の死亡を確認できる戸籍謄本や除籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 自動車検査証
- 自動車の相続人の印鑑登録証明書と実印
- 自動車の相続人の車庫証明書
- 自動車税申告書
- 手数料納付書
- 移転登録申請書
まとめ:遺産分割協議書の必要書類は時間と手間がかかります
ポイントをまとめます。
◎ 遺産分割協議書の作成に必要な書類と入手方法【しっかりと集めましょう】
- 被相続人が出生してから亡くなるまでの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書と実印
- 遺言書がある場合には遺言書(自筆証書遺言書、公正証書遺言の謄本など)
- 検認を受けた場合には検認済み証明書(自筆証書遺言の場合)
- 相続放棄者がいる場合は、相続放棄申述受理証明書
- 財産目録(必須ではありませんが、あると便利です)
◎ 遺産分割協議書を使って行う相続手続き【5つご紹介しました】
遺産分割協議書を作成するためには、相続人と相続財産を確定させるために、様々な書類が必要となります。
また、戸籍謄本や印鑑証明書は遺産分割協議書の作成のみのために準備するのではなく、相続手続きを見越して必要枚数取得しておきましょう。
書類作成後も、相続手続き等で提出する際には、合わせて提出しなければならない書類もありますので、事前にご確認ください。
特に複数の相続手続きが必要な方は、「法定相続情報一覧図」を作成しておくことをおすすめします。
必要書類集めには多大な手間や時間もかかるので、相続に詳しい専門家にお任せするのが得策といえます。
ということで今回は以上です。
遺産分割協議書の作成、必要書類集め、相続人の調査、財産調査で不明な点がある場合には、当事務所にお問い合せやご相談下さいませ。