相続放棄が知りたい【内容や活用方法を解説します】
相続放棄が知りたい人
「相続放棄は聞いたことがあるけど詳しく知りたいです。さらに、相続放棄を使うには、いつまでに?どこに?どうやって?使ったらどうなりますか?活用方法はありますか?あと注意することがあれば教えて下さい。」
こういった疑問にお答えします。
✓本記事の内容
- 相続放棄の内容と活用方法【失敗が許されないのです】
- 相続放棄する上で注意すべき3つのこと
この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。
よくある質問で「相続放棄って何ですか」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。
1.相続放棄の内容と活用方法【失敗が許されないのです】
相続放棄は認められると撤回できないのです。様々な影響を及ぼしますので失敗しないよう上手に活用しましょう。
- その①:相続放棄について(制度を知りましょう)
- その②:相続放棄の適用させる条件について(期限が以外にも早いです)
- その③:相続放棄のメリットとデメリット(もしかしたらしない方が良いかもしれません)
上記のとおり
ここから詳しく解説していきます。
その①:相続放棄について(制度を知りましょう)
相続放棄とは「被相続人(亡くなった方)の財産に対する相続権の一切を放棄すること」です。
放棄の対象となるのは被相続人のすべての財産であり、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含まれます。
そのため、相続を放棄した場合、プラスの財産とマイナスの財産、いずれも相続人が承継することはありません。
財産を調査した結果、マイナスの財産が多いという場合は、相続放棄をすることで相続によって損害を被ることを回避することができます。
例えば、被相続人が多額の借金を残して亡くなり、被相続人の財産だけでは返済に足りないというケースでは、法定相続人がこれを相続すると多額な借金返済の義務を負ってしまいます。しかし、相続を放棄すればそのような負担を被ることはありません。
このようなケースでは、相続放棄について積極的に検討するべきでしょう。
その②:相続放棄の適用させる条件について(期限が以外にも早いです)
相続放棄をすることができるのは「相続の開始を知ったときから」3カ月までと期限が定められています。
この3カ月というのは、相続の開始を知ったときから被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄申述書を提出するまでの期間を指します。
相続放棄申述書を提出するまでには、被相続人の「相続財産」を調査し、相続放棄の手続きに必要な書類(戸籍謄本など)を市区町村役場から取り寄せるなど、さまざまな手続きが必要です。3カ月はあっという間ですが自分一人で手続きを進めることが可能です。
家庭裁判所により相続放棄の申述が却下されるケースはほとんどありませんが、相続人の行為によって相続放棄が認められず、単純承認をしたものとみなされることがありますので注意が必要です。
例えば、以下のようなケースがこれに当たります。
- 相続人が相続財産の全部、または一部を処分した場合(財産を売却したり、財産に関する契約を締結・解除する行為をした場合など):「債務の弁済」も財産を処分したうちに入りますから、被相続人の残した借金を少しでも返済してしまうと、相続放棄をすることができなくなってしまいます。
- 相続人が相続財産の全部または一部を隠匿、消費した場合:相続財産を隠蔽した場合、単純承認をしたものとみなされます。仮に相続放棄が認められたあとでも、経済的価値のあるものを形見分けとして自分の財産にした場合も「隠蔽」とみなされて相続放棄が却下されてしまう可能性があります。
その③:相続放棄のメリットとデメリット(もしかしたらしない方が良いかもしれません)
【メリット】
- マイナスの財産(債務)を肩代わりしなくて済む:相続放棄をする最大のメリットは、マイナスの財産(債務)を負わないことです。
- ほかの相続人と関わらずに済むので余計なもめ事が起きない:相続放棄をすると最初から相続人でなかったことになりますから、相続人同士が遺産をどうするか話し合う遺産分割協議に参加する必要がなくなります。ほかの相続人との関係が悪く、連絡を取りたくない場合など、親族内で揉めているという方には面倒な話し合いに参加しなくて良いのですからメリットとなります。
- 特定の相続人に被相続人の財産をすべて承継させることができる:被相続人(亡くなった方)が事業主で、事業承継の必要がある場合などに限定されます。最初から相続人ではなかったことになるので、財産が分割されません。
【デメリット】
- 相続財産を一切相続できません:後でプラスの財産(債権)が発覚しても相続することができません。
- 相続放棄を撤回できない:一度相続放棄が承認されてしてしまうと、後でプラスの財産(債権)が発覚しても撤回できません。
- マイナス財産(債務)がある場合、ほかの人の負担となる:相続権が自分より相続順位が低い人へ移ることになりますので、 マイナス財産(債務)が多い場合、新たに相続人となる人の負担となります。(詳しくは「相続税の基礎控除額とは【計算には順番があります】」を参照してください)
2.相続放棄する上で注意すべき3つのこと
ここで注意すべき3つのことをお伝えします。
- その①:相続開始前に相続放棄はできません
- その②:代襲相続はできません
- その③:生命保険の取り扱いは別です
その①:相続開始前に相続放棄はできません
相続放棄をすることができるのは「相続の開始を知ったときから」3カ月までと期限が定められています。
よって家庭裁判所は相続開始前の相続放棄を受け付けていません。
そのため、相続人が相続開始前に相続を放棄するということはできません。もし相続人が相続発生する前に「相続をしません」と意思表示をしても相続放棄ではありませんので注意しましょう。
その②:代襲相続はできません
相続放棄では代襲相続は発生しません。
「代襲相続」とは、被相続人の死亡時に本来相続人となるはずだった人がすでに死亡していたなどの場合に、その子などが代わって相続する制度のことです。
例えば、「父、子、孫」の場合に父死亡時にすでに子が死亡していた場合、当該相続人となるはずであった者の子(孫)が、被相続人の財産を当該者の代わりに相続することです。
相続放棄の制度では父の財産の相続を放棄して、自分の子ども(孫)に相続させるなどの代襲相続はできません。
その③:生命保険の取り扱いは別です
相続放棄をしたとしても生命保険金は受け取れます。
被相続人(亡くなった方)が生命保険契約を締結しており、その受取人として特定の相続人が指定されているという場合には生命保険金は受取人指定がされた者の固有財産と評価され、相続財産には含まれないと考えられています。
つまり、受取人が相続人の場合に、その相続人が相続放棄をしても生命保険金は受け取れます。
被相続人(亡くなった方)が生命保険の受取人を自分自身(被相続人)として指定している場合には保険金支払請求権は被相続人ということになりますので、相続の対象となります。そのため、相続放棄をした相続人は、当該保険金に対する相続分を失うことになりますので注意しましょう。
まとめ:相続放棄を上手に活用しましょう
ポイントをまとめます。
- 相続放棄の内容をチェック
- 相続放棄の適用させる条件をチェック
- 相続放棄のメリットとデメリット
- 相続財産に見落としがないか、準備も必要なので注意しましょう
相続放棄をする最大のメリットは、マイナスの財産(債務)を負わないことです。
しかし相続放棄をすることで別の人にマイナスの財産(債務)が相続されてしまいます。
特に相続財産のなかにマイナス財産(債務)が多い場合、相続放棄をきっかけにもめ事が発生してしまうことも考えられます。
相続人同士が疎遠になっていたり、不仲になっている場合など様々な事情があると思いますが相続放棄をする前に、他の相続人となる人に伝えたり相談して決断することをおすすめします。
また、「相続の開始を知ったときから」3カ月までと期限が定められていますので、被相続人(亡くなった方)の相続財産のなかに、マイナス財産(債務)よりもプラス財産(債権)が多くあったということがないように財産をしっかりとチェックをしたり、戸籍謄本などを市区町村役場から取り寄せるなどの準備も必要です。
相続放棄は、一度決断すると後戻りできませんので失敗は許されません。
相続したいとか、したくないだけの理由で決めるのではなく、各要素をきちんと確認したうえで活用しましょう。
ということで今回は以上です。
これを参考に財産が分からないので相続放棄をした方が良いのか迷っている方は相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。