相続税の配偶者控除が知りたい【内容や適用させる要件を解説します】

相続税の配偶者控除が知りたい人
「相続財産の1億6,000万円まで配偶者は相続税がかからないと聞いたけど本当にそうですか。使えるならお得なので使いたい。この制度はどのようにしたら使えるか、また注意することがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  • 相続税の配偶者控除が分かります【上手に使えばお得な制度です】
  • 相続税の配偶者控除を使う上で注意すべき3つのこと

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「相続税の配偶者控除の内容や使い方が知りたい」という疑問があります。その疑問を解決していきましょう。

1.相続税の配偶者控除が分かります【上手に使えばお得な制度です】

内容や要件を見ていきましょう。

  • その①:相続税の配偶者控除について(制度を知りましょう)
  • その②:相続税の配偶者控除が使えるかのチェック(要件があります)

上記のとおり

相続税の配偶者控除について詳しく解説していきます。

その①:相続税の配偶者控除について(制度を知りましょう)


相続税の配偶者控除は、故人になる配偶者の生活を守るためにあります。
配偶者が相続した遺産総額(課税対象額)が1億6,000万円までであれば、配偶者に相続税が課税されないですし、もし遺産総額(課税対象額)が1億6,000万円を超えても、配偶者の法定相続分までであれば、相続税は課税されません。

  1. 1億6,000万円まで
  2. 配偶者の法定相続分相当額

2の配偶者の法定相続分相当額は分かりづらいですが、たとえば、相続人が、「配偶者と子」であれば、配偶者の法定相続分は2分の1です。遺産総額(課税対象額)が4億円あったとして、このうち2億円までなら1億6,000万円を超えていても配偶者が相続すれば相続税はかからないということです。

その②:相続税の配偶者控除が使えるかのチェック(要件があります)


相続税の配偶者控除を適用させるためには、次の3つの要件を満たしていなければなりません。

  1. 戸籍上の配偶者であること
  2. 相続税の申告期限までに遺産分割がまとまっていること
  3. 相続税の申告書を税務署に提出すること

「戸籍上の配偶者であること」とは、戸籍上に配偶者として登録されていることです。
戸籍上の配偶者であれば婚姻期間の長短は問われないため、婚姻期間が20年でも1ヶ月でも配偶者控除が使えます。
ただし籍を入れていない、いわゆる「内縁関係の妻や夫」には、相続税の配偶者控除は使えません。

「相続税の申告期限までに遺産分割がまとまっていること」とは、相続人全員で遺産分割について話し合いが確定している必要があります。
相続税の申告は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。
相続人全員でどう分割するか話し合うことを遺産分割協議というのですが、遺産分割協議をしていない、もしくは遺産の分け方が決まっていなければ配偶者控除を受けることができません。

「相続税の申告書を税務署に提出すること」とは、配偶者控除を受けるためには、相続税が0円になった場合でも、相続税の申告書は提出しなければなりません。
申告書が提出されていないと、税務署は「配偶者控除を使って相続税が0円」になったのか「普通に申告を忘れているのか」と分からないからです。

2.相続税の配偶者控除を使う上で注意すべき3つのこと

ここで注意すべき3つのことをお伝えします。

  • その①:配偶者が遺産分割の前に死亡した場合でも配偶者控除は受けられます
  • その②:遺産を隠してはいけません
  • その③:2次相続のことも考えましょう(超重要です)

その①:配偶者が遺産分割の前に死亡した場合でも配偶者控除は受けられます


遺産分割協議中に配偶者がお亡くなりになることもあります。
この場合に、配偶者がいなくなるので配偶者控除が使えないように思えますが、普通に使うことができます。
使う方法としましては、遺産分割協議中であったものを継続させ配偶者が生存しているものとして、遺産分割をまとめます。
これにより相続人の合意で配偶者が受け取れることにした遺産についての配偶者控除が使えます。もちろん申告も必要です。


その②:遺産を隠してはいけません


遺産を隠していることが税務調査によって発覚した場合は、修正申告が必要となります。
しかも遺産の隠蔽が発覚すると、配偶者控除が使えないだけでなく、ペナルティとして重加算税が35%(もしくは40%)課税されます。
このようなペナルティを課せられないためにも、相続税は正しく申告するようにしましょう。


その③:2次相続のことも考えましょう


相続税の配偶者控除の範囲内であれば、相続税は一切かからないと何も考えずに配偶者に遺産を分割するととても危険です。
なぜなら2次相続に税負担が大きくなる可能性があるのです。

2次相続に相続税負担が大きくなる要因

  • 2次相続は配偶者控除が使えない
  • 2次相続は相続人が1人減る(基礎控除額が減る)
  • 2次相続は配偶者の財産も加算される(遺産総額が高くなる)

例として父、母の順番で相続が発生するとして、子どもの立場から考えてみましょう。
父が死亡したとき(1次相続)と、母が死亡したとき(2次相続)の2度の相続が起きることになります。

「2次相続は配偶者控除が使えない」とは、母が相続するとき(1次相続)には配偶者控除が使えますが、子が相続するとき(2次相続)にはそうした特例はなく配偶者控除が使えません。

「2次相続は相続人が1人減る」とは、母が死亡したとき(2次相続)には単純に相続人が1人減りますので相続税の基礎控除額が600万円分減ります。よって遺産総額(課税対象額)が上がることになります。詳しくは「相続税の基礎控除について」を参照してください。

「2次相続は配偶者の財産も加算される」とは、父が死亡したとき(1次相続)に配偶者控除を最大限利用するために、配偶者の母により多くの財産を分割しようとすると、その分、母が死亡したとき(2次相続)に残る財産が多くなります。
財産が多いということは遺産総額(課税対象額)が上がることになります。相続税は累進課税制度となっておりますので相続税の課税対象となる財産が大きければ税率(最大55%)も変わってきます。詳しくは「相続税がいくらかかるのか」を参照してください。
よって子どもにかかる相続税が増えてしまうのです。さらに、母も父が死亡したとき(1次相続)にすでに母自身の財産があった場合には、さらに相続税が増えます。
上記の理由から、1次相続の段階で、2次相続のことも考えて、遺産分割を考える必要があります。

まとめ:相続税の配偶者控除はメリットだけではありません

ポイントをまとめます。

  • 相続税の配偶者控除について(制度を知りましょう)
  • 相続税の配偶者控除が使えるかのチェック(要件があります)
  • 2次相続のことも考えましょう(超重要です)


相続税の配偶者控除は、故人になる配偶者の生活を守るためにあります。

しかし、使い方によっては本来よりも多く相続税を納めてしまうことや、遺産分割協議がまとまらなければ配偶者控除が使えなくなります。また、続税が0円になる場合でも、相続税の申告をしなければなりません。
2次相続も踏まえた遺産分割をして配偶者控除を活用する。これが相続税の負担を抑えるベストな選択です。
具体的にどのように1次相続と2次相続を配分するかは、個別にシミュレーションをするしかありません。なぜなら相続財産の内容や金額、家族構成、2次相続がいつ起きるのかなど、様々な要素が絡むからです。
ただし、「2次相続が起きるまでに、配偶者がどれくらいの財産を必要とするのか」ということは一つのポイントとなります。
相続税の計算や、配偶者控除の要件などはとても複雑なので、相続税に対して相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします

ということで今回は以上です。

これを参考に1次相続の発生前や発生中の方は2次相続のことを考える機会になればと思います。

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