小規模宅地等の特例が知りたい【制度内容や適用させる要件を解説します】
小規模宅地等の特例が知りたい人
「小規模宅地等の特例は相続税が大幅に減らすことができると聞きましたが本当に大幅に減らすことができますか。利用できるなら絶対利用したい。この特例を利用できる要件を教えて欲しいです。また、注意することがあれば教えてください。」
こういった疑問にお答えします。
✓本記事の内容
- 小規模宅地等の特例が分かります【使えるなら絶対に使いましょう】
- 小規模宅地等の特例を使う上で注意すべき3つのこと
この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。
よくある質問で「小規模宅地等の特例の内容や適用しているか知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。
1.小規模宅地等の特例が分かります【使えるなら絶対に使いましょう】
相続税を大幅に減額できる可能性があります。
- その①:小規模宅地等の特例について(制度内容を知りましょう)
- その②:小規模宅地等の特例の計算方法(コツさえわかれば計算方法は簡単です)
- その③:小規模宅地等の特例が利用できるかチェック(適用させる要件があります)
上記のとおり
ここから詳しく解説していきます。
その①:小規模宅地等の特例について(制度内容を知りましょう)
適用条件に合う土地であれば、小規模宅地等の特例を利用することで相続税評価額は最大80%減額できる制度です。
この特例を利用できるかどうかで相続税が1,000万円単位で変わることもありますので、土地を相続された方のほとんどが利用を試みています。
小規模宅地等の特例の対象となる土地は3種類あります。
- 特定居住用宅地等
- 特定事業用宅地等
- 貸付事業用宅地等
1.特定居住用宅地等:故人が住宅として使われていた土地のことです。
330㎡まで80%の評価額減となります。
故人と生計を共にしていた親族が住宅として使っていた土地も小規模宅地等の特例の対象となります。
なお、「生計を共にしていた」というのは経済的に一つのまとまりであることを指します。
別々に生活をしていたとしても仕送りなどをしている場合は生計を共にしていたとみなされます。
2.特定事業用宅地等:故人が事業で使われていた土地のことです。
400㎡までは80%の評価減となります。
自分が所有している土地の上で個人名義の建物で事業をしている場合であり、花屋さんなどの個人商店や事務所、工場等が当てはまります。
また、故人と生計を共にしていた親族が事業に使っていた土地も小規模宅地等の特例の対象となります。
ちなみに親族経営の株式会社や有限会社など、土地の上の建物(社屋や事務所など)が法人名義の場合は「特定同族会社事業用宅地」に区分されますが、一定要件を満たせば400㎡まで80%減額となります。
3.貸付事業用宅地等:故人がその土地を第三者に貸したり、アパートやマンションなどで賃貸経営していたりするなど、不動産貸付業に使われていた土地です。
200㎡まで50%の評価減となります。
また、故人と生計を共にしていた親族が不動産貸付業に使っていた土地も小規模宅地等の特例の対象となります。
なお、駐車場や駐輪場であっても敷地上に構築物がある場合は小規模宅地等の特例の対象です。
その②:小規模宅地等の特例の計算方法(コツさえわかれば計算方法は簡単です)
[特定居住用宅地等の特例の限度面積と減額される割合]
特定居住用宅地等に小規模宅地等の特例を適用する場合の限度面積は330㎡、減額率は80%です。
330㎡までが80%引きとなり、それを超える部分は通常の評価額となります。
仮に土地の評価額が5,000万円で500㎡の特定居住用宅地等を相続した場合、500㎡のうち330㎡は80%減額されるので5,000万円×330㎡/500㎡×80%=▲2,640万円の減額となります。
よって土地の評価額(5,000万円)は、5,000万円-2,640万円=2,360万円となります。
[特定事業用宅地等の特例の限度面積と減額される割合]
特定事業用宅地等に小規模宅地等の特例を適用する場合の限度面積は400㎡、減額率は80%です。
400㎡までが80%引きとなり、それを超える部分は通常の評価額となります。
仮に土地の評価額が5,000万円で500㎡の特定事業用宅地等を相続した場合、500㎡のうち400㎡は80%減額されるので5,000万円×400㎡/500㎡×80%=▲3,200万円の減額となります。
よって土地の評価額(5,000万円)は、5,000万円-3,200万円=1,800万円となります。
[貸付事業用宅地等の特例の限度面積と減額される割合]
貸付事業用宅地等に小規模宅地等の特例を適用する場合の限度面積は200㎡、減額率は50%です。
200㎡までが50%引きとなり、それを超える部分は通常の評価額となります。
仮に土地の評価額が5,000万円で500㎡の貸付事業用宅地等を相続した場合、500㎡のうち200㎡は50%減額されるので5,000万円×200㎡/500㎡×50%=▲1,600万円の減額となります。
よって土地の評価額(5,000万円)は、5,000万円-1,600万円=3,400万円となります。
その③:小規模宅地等の特例が利用できるかチェック(適用させる要件があります)
小規模宅地等の特例の適用条件は土地の種類で適用条件は異なり、それぞれ以下の条件を満たす必要があります。
<特定居住用宅地等に小規模宅地等の特例を適用するための要件>
- 故人や生計を共にしていた親族が住んでいた土地を配偶者が相続する
- 同居の親族が相続した土地に住み続ける
- 生計を共にしていた親族が相続した土地に住み続ける
- 故人と別居していて、3年以上借家に住んでいる親族が相続した土地に住み続ける
<特定事業用宅地等に小規模宅地等の特例を適用するための要件>
- 相続開始3年前よりも以前からその土地で事業を営んでいる
- 相続人が相続税の申告期限まで土地を保有し、事業を継続している
<貸付事業用宅地等に小規模宅地等の特例を適用するための要件>
- 相続開始前からその土地で土地を貸付している
- 相続人が相続税の申告期限まで土地を貸付している
※相続開始前3年以内に不動産貸付業用に使われ始めた土地は小規模宅地等の特例の対象外となりましたのでご注意ください。
また、相続が発生した際、これらの要件を満たしていれば自動的に特例が適用される訳ではありません。
小規模宅地等の特例を利用するためには管轄税務署への申告が必要ですので申告期限に遅れないようにしましょう。
2.小規模宅地等の特例を使う上で注意すべき3つのこと
ここで注意すべき3つのことをお伝えします。
- その①:故人が老人ホーム等に入居していた場合は一定の要件があります
- その②:住居が2世帯住宅の場合は登記の内容により適用不可になります
- その③:相続時精算課税制度で土地を贈与した場合には利用できません
その①:故人が老人ホーム等に入居していた場合は一定の要件があります
一定の要件を満たせば、老人ホーム等に入居した後の自宅にも小規模宅地等の特例が使えます。
故人が老人ホーム等に入居する直前に居住していた宅地等が小規模宅地等の特例の適用対象になります。
適用させる要件は以下となります。
- 相続開始直前において要支援や要介護認定を受けていること
- 老人福祉法、介護保険法等で定める下記の施設のいずれかに入居等をしていたこと
特別養護老人ホーム
有料老人ホーム
軽費老人ホーム
サービス付き高齢者用住宅
介護医療院
介護老人保健施設
認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居
親が障害者認定されている場合も、以下の施設等へ入居・入所していれば特例を使えます。
障害者支援施設
共同生活援助を行う住居
ただし、入居または入所中に自宅を賃貸していた場合は特例を使えませんのでご注意ください。
その②:住居が2世帯住宅の場合は登記の内容により適用不可になります
二世帯住宅で暮らしている方の場合、中で行き来ができなかったとしても、同居親族と扱われますので小規模宅地等の特例は受けられます。
しかし、これは「共有登記」されているのが原則で「区分所有登記」されている二世帯住宅は小規模宅地等の特例は受けられません。
例えば1階部分が父の登記、2階部分が子の登記にして別々にしていたら適用不可なので注意してください。
その③:相続時精算課税制度で土地を贈与した場合には利用できません
「相続時精算課税制度」とは60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子供や孫に贈与する際に贈与税を2,500万円まで無税にできる制度です。
ただし、相続時に贈与額を相続財産に加算しますので節税効果はありません。
故人が相続時精算課税制度を利用して贈与した土地は小規模宅地等の特例の対象外となりますのでご注意ください。
詳しくは「相続時精算課税制度について【制度内容や活用方法を解説します】」をご覧ください。
まとめ:小規模宅地等の特例はメリットだらけです
ポイントをまとめます。
・小規模宅地等の特例について(最大80%引きです!)
・小規模宅地等の特例の計算方法(土地の種類により計算内容が変わります)
・小規模宅地等の特例が利用できるかチェック(要件を確認しましょう)
・適用できたのに何も考えずに適用不可になるのは勿体ない!
小規模宅地等の特例を利用すると土地の評価額は大幅に下がり、相続税の大幅圧縮にも繋がりますので是非利用するべきです。
土地を複数所有されている方は、それらの土地の評価額によって限度面積まで小規模宅地等の特例を利用する土地を選択できます。
この選択で相続税の大幅圧縮だけでなく2次相続まで考えて節税対策もすることも出来ますので活用したい特例なのです。
ただし土地によっては特例を使えるかどうか判断の難しい条件もあるため、対象となる相続人や土地の利用状況等で迷うと思います。
また、せっかくこの特例を利用できたのに相続発生したら適用不可になっていたとご自身で使えていたお金を無駄にするようなことがないように注意してください。
迷ってしまう場合は、相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
ということで今回は以上です。
これを参考に土地を所有されている方はどのくらい減額になるのか計算してみてください。