賃貸アパートの相続が知りたい①【相続手続きの流れや内容を解説します】

賃貸アパートの相続が知りたい人
「親からアパートを相続する予定だが相続発生した後の手続きの流れが知りたい。あと注意することがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. 賃貸アパートの相続が分かります【手続きに順番があります】
  2. 賃貸アパートの相続をする上で注意すべき3つのこと

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「賃貸アパートの相続について手続きの流れや内容を知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.賃貸アパートの相続が分かります【手続きに順番があります】

基礎知識を押さえましょう

賃貸アパートの相続について(相続の手続きや内容を解説します)

相続が開始したら、まず遺言書の有無を確認し、相続人・相続財産の調査と確定、遺言書がない場合は遺産分割協議を行い、アパートを引き継ぐ方が決まったら不動産の移転登記(相続登記)をします。相続税申告が必要な方は、亡くなられてから10ヶ月以内に手続きをします。

【アパートの相続手続きの流れ】

① 遺言の調査、遺言書の検認や開封

  ↓

② 相続人・相続財産の調査

  ↓

③ 遺産分割協議書の作成

  ↓

④ 相続登記をする

  ↓

⑤ 相続税の申告・納付


ここから各手続きの詳しい内容について解説していきます

① 遺言の調査、遺言書の検認や開封

相続の開始があったとき、まず遺言書の有無を調査確認しましょう。

「遺言書」がある場合は遺言書の内容にしたがって遺産を分けますが、「遺言書」がない場合には相続人全員で集まって遺産の分け方を決める必要があるからです。

また、遺産の名義変更や不動産の所有権移転登記で遺言書の提出が求められることもあります。

ちなみに「遺言書」を発見したら勝手に開封してはいけません。

検認をせずに開封してしまうと5万円以下の過料を支払わなければいけなくなる場合があります。

「遺言書」を保管している方や発見した方は相続開始を知った後、公正証書遺言の場合を除き、遅滞なく亡くなられた方の住所地を管轄している家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。

確認後、「遺言書」の原本に「検認済み」と表示された「検認済証明書」を発行してもらえるので「遺言書」に添付することができます。

② 相続人・相続財産の調査

遺言書がない場合は相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めなければいけません。

相続人全員で遺産の分け方を話し合うことを「遺産分割協議」と言います。

「遺産分割協議」をおこなうためには相続人を調査して確定する必要があります。

相続人全員が参加しなければ「遺産分割協議」は無効となるからです。

相続人の調査をおこなうには故人が出生から死亡までの全ての戸籍謄本や除籍謄本などを取ることで確定させる必要があります。

相続人は既に分かっているから調査は不要ではないかと思う方もいるかもしれませんが、被相続人が認知した婚外の子や離婚した前配偶者との間の子供がいる場合、あるいは養子縁組をしていたような場合に、現在の家族がその全てを知っているとは限りません。

この作業をおろそかにして遺産分割を進めても、無効となる可能性があります。

戸籍謄本や除籍謄本を取得するには本籍地の市区町村役場で取得申請をします。

遠方の市区町村役場の場合には郵送でも取り寄せができますが、被相続人が転籍を繰り返していると全ての市区町村役場に取り寄せが必要になり、漏れが出ないよう慎重に進めるか、相続に詳しい専門家に取得代行を依頼していく必要が出てきます。

相続税の申告期限(10ヶ月以内)までに遺産分割を終わらせるためには、戸籍調査はできるだけ早めに着手することが大切です。

「相続財産の調査」とは故人が有していた財産や、借金などの債務を調査することです。

相続財産を把握しなければ遺産分割協議をおこなうことができませんので、故人が所有していた財産を全て確認しましょう。

詳しくは「相続税の基礎控除について【計算方法や注意点を解説します】その③:相続税がかかるかチェック(遺産総額の確認方法、計算方法は簡単です)」をご覧ください。

③ 遺産分割協議書の作成

相続人の調査と相続財産の調査が完了したら、次はこの遺産を相続人の間でどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議」を行うことになります。

なお、遺言書がある場合は原則的には「遺産分割協議」を行う必要ありません。

遺産分割協議で相続人全員の合意で遺産分割が確定すれば、合意の証明として「遺産分割協議」を作成する必要があります。

相続人全員が署名押印する必要があり、一人でも欠けていたら無効となってしまいます。

仮に「遺産分割協議」で全員の同意が得られなければ、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てることになり、さらに調停でも合意ができない場合は、遺産分割審判に移行することになります。

ちなみに「遺産分割協議書」は相続人全員分を作成し、各相続人が1通ずつ保管するようにしてください。

各相続人が1通ずつ持っていれば必要な相続手続きを円滑に進めていくことができます。

「遺産分割協議書」がなければ不動産の相続登記や金融機関での名義変更や口座解約が出来ない場合もありますのでご注意ください。

④ 相続登記をする

相続登記とは、被相続人から相続した自宅、アパートなどの不動産の名義を被相続人から不動産を相続した相続人に変更する名義変更登記手続きをいいます。

管轄法務局に登記申請を行います。

詳しくは「相続登記が知りたい【制度内容や自分で行う方法を解説します】」をご覧ください。

2022年8月1日時点では相続登記に申請義務がなく、相続登記を申請するための期限はありません。

しかし、2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

しかも正当な理由なく登記や名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となります。

相続人が遺言で財産を譲り受けた場合も同様に3年以内にしないと名義変更も過料の対象となります。

⑤ 相続税の申告・納付

相続財産が基礎控除額以下であれば相続税を申告する必要はありませんが、基礎控除を超える場合は相続税申告手続きをする必要があります。

詳しくは「相続税の基礎控除について【計算方法や注意点を解説します】その③:相続税がかかるかチェック(遺産総額の確認方法、計算方法は簡単です)」をご覧ください。

期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告を行なう必要があります。

また、相続税の納税も同じ期限になります。

ちなみに「遺産分割協議書」が終わっていなくとも、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月が経過すると税務署から督促が来たり、利子税、延滞税などが課税されたりすることもあります。

「遺産分割協議書」が終わっていない場合は法定相続人が法定相続分で取得したものとして相続税申告と納税をおこなうようになります。

そして、「遺産分割協議書」がまとまった後、その内容に応じて相続税の計算をおこない、税務署で手続きをおこないます。

相続税を払い過ぎていた場合は還付を受け、相続税が不足していた場合は追加で支払うことになります。

なお、相続税を支払えない場合は、遺産そのものを支払う物納や分割で相続税を支払う分納が可能です。

2.賃貸アパートの相続をする上で注意すべき3つのこと

ここで注意すべき3つのことをお伝えします。

その①:アパートの名義は家族の共有名義にしない方がいいです

その②:相続発生後の賃料は法定相続分通りに分割しましょう

その③:賃借人に連絡しましょう

その①:アパートの名義は家族の共有名義にしない方がいいです

アパートの名義は家族の共有名義にするととてもやっかいですので、共有は避けましょう。というのも、将来、新たな相続が発生した場合に権利が複雑化してしまうことや、共有のアパートは、賃料の配分トラブルが起こりやすく、また、売却する場合でも全員一致でないとすることができないからです。

今後日本では、世帯数の減少、大規模な宅地供給という問題を抱え、立地などの条件が悪いアパート経営は厳しい局面を迎えると言われています。不動産市況を見て迅速な売却を要する際に「売れない」ということは大きな損失となりかねません。

したがって、アパートを共有で持つことは避けた方がいいのです。

アパートしか遺産がなく、共有にせざるを得ないというような場合には、売却して金銭で分けたり、代表の相続人に信託したりすることで解決できるかもしれません。

このような場合には相続に詳しい専門家のアドバイスをもらったほうがいいでしょう。

その②:相続発生後の賃料は法定相続分通りに分割しましょう

相続発生から遺産分割協議が整うまでには時間が空いてしまうため、相続発生後の賃料は誰のものなのかという問題が生じます。

遺産として扱われるのは被相続人が亡くなった時点の財産なので、相続発生後の賃料は遺産とは別のものとして扱うのが原則となっています。

よって遺産分割協議によってアパートを相続する人を決めたとしても、相続発生後の賃料は法定相続分に従って分割しましょう。

その③:賃借人に連絡しましょう

アパートの相続人が決まったら、大家が新しくなったことを賃借人に伝えましょう。

できれば相続が発生した時点で連絡しておき、その後アパートを相続する人が決まってから改めて挨拶をするのがベターです。

被相続人の預金口座が凍結されてしまうと、賃借人が家賃を振り込めなくなってしまいますので、別の預金口座に振り込んでもらう必要もでてきます。

賃借人が、住んでいるアパートの大家が誰なのか知らないのは問題ですので、忘れずに伝えてください。

まとめ:賃貸アパートの相続の流れや内容の基礎知識を身につけましょう。

ポイントをまとめます。

  • 賃貸アパートの相続について(相続の手続きや内容を押さえましょう)
  • 注意点を把握しておきましょう

今回はアパートを相続しそうになっているケースで、実際にアパートを相続したらどのような手続きがあるのかをみてきました。

相続は何かとトラブルになりがちですが、特にアパートが残された場合、手続きも複雑ですし、場合によっては相当な負担がかかってしまいます。

分からないことがありましたら当事務所にお問い合せやご相談下さいませ。

行政書士おおこし法務事務所

ということで今回は以上です。

これを参考に賃貸アパートの相続が発生した際にはご活用ください。

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