金融機関や証券会社の相続手続きが知りたい【解約や名義変更手続きを解説します】

金融機関や証券会社の相続手続きが知りたい人
「相続が発生して被相続人(故人)が所有していた金融機関や証券会社の口座を解約や名義変更をしたいのですが、わからないので教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

1.金融機関の口座の解約や名義変更の手続きについて【集める書類が意外と多いです】

2.証券会社の口座の解約や名義変更の手続きについて【金融機関とは異なる部分があります】

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「金融機関や証券会社の相続手続きが知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.金融機関の口座の解約や名義変更の手続きについて【集める書類が意外と多いです】

金融機関によって書類の有効期限を設けているので注意が必要です!

【銀行口座の相続には2種類あります】

銀行口座の相続には大きく2つの方法があります。

① 亡くなった人が使っていた口座の名義を変更して引き継ぐ方法


② 口座を解約して預金の払戻しを受ける方法

一部の銀行や金融商品によっては、②の方法しか認められない場合もありますので、各銀行にお問い合わせください。

【相続が開始したら銀行に連絡しましょう】

相続が発生した時には、必ず銀行に連絡をしなければなりません。

銀行に連絡すると、被相続人の口座は凍結され、勝手に引き出すことはできなくなります。

亡くなった方の預貯金は、遺産として相続人全員の共有の財産となります。

そして、一部の相続人が亡くなった方の口座から勝手にお金を引き出し、使わないように、金融機関は預貯金口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座を凍結して取引を停止させます。(停止される取引は、引き出しや入金もできなくなります。)

つまり、公共料金やクレジットカードの支払いについて口座からの引き落としができなくなり、株などの配当金や不動産を貸している場合の賃料など振り込みによる受け取りもできなくなります。

よって、解約や名義変更の手続きに入る前に、その口座で決済されている料金や取引について通帳の履歴等でしっかり確認することが大切です。

また、預金口座が凍結されるのは、一部の相続人が遺産分割確定前に勝手に預貯金を引き出して、持ち逃げや使い込みをするリスクの防止とトラブルを避けることが要因として考えられます。

もしそのようなことが起きた場合には、金融機関側は責任を問われる可能性もあるからです。

【相続税申告にも注意しましょう】

銀行口座も相続財産の一部ですから、相続税申告が必要な場合には死亡時の預金残高が課税対象となります。

申告書には残高証明書を添付する必要があり、通帳を紛失してしまって入出金の履歴がわからない場合には取引履歴を照会することもあります。
詳しくは「残高証明書の発行手続きが知りたい【必要性や取得方法を解説します】」をご覧ください。

相続税の申告は亡くなった人の死亡日から10カ月以内に行う必要がありますので、残高証明書の取得や取引履歴の照会は解約や名義変更より前に行ったほうがよいでしょう。

【借金も相続しなければならない?!】

被相続人の預金から勝手に引き出してしまうと、その時点で単純承認が成立しますので注意しましょう。

「単純承認が成立する」とは、その相続人が被相続人の財産も債務も引き継ぐと決めたことを意味します。

そのため、単純承認が成立すると、『相続放棄』することができなくなります。
詳しくは「相続放棄が知りたい【内容や活用方法を解説します】」をご覧ください。

その結果、相続財産に多額の借金が含まれていたとしても、その借金を相続するしかなくなってしまいます。

単純相続を避けるため、被相続人の預金口座から勝手に引き出すことは避けなければなりません。

【遺産分割前の相続預金の払戻し制度について検討する】

被相続人が急になくなると配偶者など家計を同一にしている人は、被相続人の口座が凍結されることで、生活に困ることもあります。

また、葬儀費用の支払いを故人の預貯金で支払いたいケースも多いでしょう。

そのような状況に対応できるように民法が改正され2019年7月1日から、遺産分割前でも一定額以内であれば、相続人が被相続人の預貯金を払い戻すことができるようになりました。

遺産分割前に相続預金の払い戻しができる制度は2つあります。

・家庭裁判所の判断を経ずに払い戻せる制度

・家庭裁判所の判断により払い戻しができる制度

「家庭裁判所の判断を経ずに払い戻せる制度」では、以下の式で口座ごとに払い戻せる金額が決まります。

相続発生日の預金額×3分の1×申請者の法定相続分=払い戻せる金額

ただし、同一金融機関から払い戻せる金額の上限は150万円(複数の口座があるときには全体で150万円)です。払い戻しは、複数の相続人がいても単独でおこなうことができます。

払い戻しに必要な書類は以下の通りです。

・申請者の印鑑証明書

・被相続人の除籍謄本、出生から死亡までのすべての戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

金融機関によってはこれ以外の書類が追加で必要になることもあるので、手続きの前には各金融機関に確認してください。

また、遺言書があるケースでは、制度が利用できないこともあります。

「家庭裁判所の判断により払い戻しができる制度」は、遺産分割の調停や審判が申し立てられているときに利用する制度です。

家庭裁判所に申し立てをして、認められると払い戻しができます。

払い戻しが認められるのは、共同相続人の利益を害しないときだけです。また、金額も家庭裁判所によって決定されます。

払い戻しに必要な書類は以下の通りです。

・申請者の印鑑証明書

・家庭裁判所の審判書謄本

この制度でも、相続人は単独で払い戻しを受けることができます。

【金融機関の口座の解約や名義変更の流れや必要書類について】

解約や名義変更の手続きの流れについて解説します

① 必要な書類を集める

② 必要事項を記載して銀行に提出する

③ 口座が解約され払い戻しが行われる

必要な手続きの内容を順番に確認していきましょう。

【①必要な書類を集める】

状況によって必要になってくる書類も異なります。各状況ごとに説明していきます。

① 遺産分割協議書がある場合(遺言書なし)

・遺産分割協議書

・口座名義人(被相続人)の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑登録証明書(取得から3ヶ月以内のもの)

・解約する預貯金口座の通帳、キャッシュカード

② 遺産分割協議書がない場合(遺言書なし)

・口座名義人(被相続人)の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑登録証明書(取得から3ヶ月以内のもの)

・解約する預貯金口座の通帳、キャッシュカード

③ 遺言書がある場合

・家庭裁判所の検認済み遺言書(または公正証書遺言)

・口座名義人(被相続人)の死亡の記載のある戸籍

・相続する方の戸籍

・相続する方の印鑑登録証明書(取得から3ヶ月以内のもの)

・解約する預貯金口座の通帳、キャッシュカード

※遺言書がある場合には、ない場合と比べて、集める書類が少なくて済みます。

全ての場合において戸籍謄本の提出が必要ですが、「法定相続情報一覧図の写し」でも代用は可能です。この場合、戸籍謄本の提出は原則必要ありません。

詳しくは「法定相続情報一覧図が知りたい①【制度内容と必要なケースを解説します】」をご覧ください。

上記の書類以外にも金融機関より、別途、提出を求められる書類がある場合があります。

【②必要事項を記載して銀行に提出する】

相続届出書類(払い戻し請求書など)は、銀行ごとにその書式は異なりますが原則として相続人全員の署名・捺印(実印)が必要になります。

また、記載しなければならない事項は、おおよそ以下のとおりです。

・被相続人の氏名や亡くなった日

・相続手続を依頼した人の氏名

・被相続人の名義となっている預金口座

・払戻金を受け取る相続人の預金口座

遺言書や遺産分割協議書で相続する人が明確になっている場合、相続届は受取人となる相続人の署名と実印だけで構いません。

すべての書類をそろえて相続届に必要な事項を記載したら、銀行に郵送または提出します。

【③口座が解約(名義変更)され払い戻しが行われる】

すべての書類がそろい提出書類が受理されると、解約の場合には指定した相続人の口座に預金が振り込まれます。

名義変更の場合には、被相続人(故人)の名義が指定した相続人に変わります。

期間は、申請から1か月程度かかります。

【金融機関の口座が不明な場合】

詳しくは「相続財産の調査方法が知りたい①【金融機関の調査方法を解説します】」をご覧ください。

2.証券会社の口座の解約や名義変更の手続きについて【金融機関の手続きとは異なる部分があります】

相続人の口座に一旦移し替える必要があります

【証券会社での相続手続き】

原則として、被相続人(故人)の株式は、相続人の証券口座への移管する手続きとなります。

※移管とは、管理、管轄を他に移すことをいいます。この場合、他の証券会社(相続人の)の口座へ預け替えすることを意味します。

まず、被相続人の株式が、どこにどのくらいあるのかを調べなければなりません。その場合、その株式が上場株式なのか非上場株式なのかで対応はかわってきます。

上場株式の場合には証券会社が管理をしていますので、どこの証券会社を利用していたか分かっている場合には、その証券会社に問い合わせをおこない、残高明細書を発行してもらい確認をおこないます。

非上場株式の場合には、証券会社ではなく、株式を発行している企業に直接確認するしかありません。

【上場株式の場合】

上場株式の場合、相続の手続きは預貯金の相続手続きと似ています。

証券会社に、被相続人が死亡したことを伝えると、相続手続きに必要な依頼書などを発行してくれます。

その後、株式の移管手続きに移ります。一般的な移管手続きに必要な書類は以下のとおりです。

・被相続人の戸籍謄本(死亡による除籍が確認できるもの)

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑登録証明書

・委任状(代表する相続人に手続きを委任するために必要)

・移管手続依頼書

・相続人の移管先口座

※証券会社により提出する書類は異なります。

【非上場株式の場合】

非上場株式の場合、株式を発行している企業との直接のやりとりになります。(証券会社は関与していません。)

手続きとしては、企業にある株式名簿の名義を被相続人から相続人へ書換をおこないます。

また、非上場企業の場合には、譲渡制限付株式を発行しているケースが多く存在しますが、相続人は相続によって当然に株式を承継しますので、原則、会社側は株主名簿の名義の書換には対応してくれます。

ただし、その会社の定款に売渡請求をすることができる旨を定めている場合には、会社側より株式の売渡を請求される場合があります。売渡請求とは、相続などを原因として株式を取得した者へ当該株式を当該会社へ売渡すことを請求できる制度になります。

《会社法第174条》
「株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。」

その場合、会社側が相続人に対して売渡請求を行使するためには以下の要件が必要になってきます。

・定款に相続人などに対し売渡請求ができる旨を定めている

・譲渡制限株式であること

・相続があったことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議で売渡請求する旨を承認したうえで当該相続人へ請求をすること

・買取金額が余剰金の分配可能額を超えないこと

【株式の遺産分割について】

株式の相続を遺産分割協議で決めることは可能ですが、現金、預貯金と違い、相続開始と同時に法定相続分に応じて分割されるわけではありません。

まずは、相続人全員の共有状態になりますので、遺産分割協議を経て相続人となった者が株式の名義変更をしなくてはなりません。

上場株式の場合には、株式の評価額は取引残高報告書にて確認することが可能ですが、非上場株式の場合、計算が複雑になるケースが多いので予め専門家へ相談するほうが良いでしょう。

【株式の預託先が不明な場合】

詳しくは「相続財産の調査方法が知りたい②【有価証券の調査方法を解説します】」をご覧ください。

まとめ:時間と手間が掛かる場合には専門家にお任せしましょう

ポイントをまとめます。

・金融機関の口座の解約や名義変更の手続きについて【集める書類が意外と多いです】

・証券会社の口座の解約や名義変更の手続きについて【金融機関とは異なる部分があります】

銀行口座の解約や名義変更には、口座が凍結される前に確認しておくべき事項が多く、実際の手続きの際にはさまざまな書類の提出が必要です。

また、銀行の窓口は平日しか開いていませんし、あらかじめ予約をしておかないと書類の提出すら受け付けてもらえないことが多いです。

株式の相続手続きは、預貯金よりも手続き方法が複雑で時間もかかります。

相続人が証券口座を持ってない場合には、用意しなければいけないこともありますので預貯金よりも遥かに大変です。

弊所に依頼すれば戸籍謄本等の必要書類の取得から名義変更まですべて代行できます。

手続きに不安がある、忙しくて手続きがなかなか進まないといった場合は、ぜひ一度、弊所までご相談ください。

何卒よろしくお願い申し上げます。

行政書士おおこし法務事務所

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