相続登記が知りたい【制度内容や自分で行う方法を解説します】

相続登記が知りたい人
「相続登記が義務化されると聞いたけど内容がわからないので知りたい。さらに自分で行えるかついでに知りたい。あと注意することがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. 相続登記の制度内容と自分で行う方法【義務化になります】
  2. 相続登記をする上で注意すべき3つのこと

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「相続登記の内容が知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.相続登記の制度内容と自分で行う方法【義務化になります】

日本の社会問題や課題があります

  • その①:相続登記の義務化について(2024年4月1日から義務化です)
  • その②:自分で相続登記を行う方法(時間と労力がかかります)
  • その③:相続登記に関連した相続人申告登記(2024年4月1日施行です)

上記のとおり

相続登記分かるようにここから詳しく解説していきます。

その①:相続登記の義務化について(2024年4月1日から義務化です)

相続登記とは、被相続人から相続した自宅、アパートなどの不動産の名義を被相続人から不動産を相続した相続人に変更する名義変更登記手続きをいいます。

2022年8月1日時点では相続登記に申請義務がなく、相続登記を申請するための期限はありません。

しかし、2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

しかも正当な理由なく登記や名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となります。

相続人が遺言で財産を譲り受けた場合も同様に3年以内にしないと名義変更も過料の対象となります。

なぜ相続登記の申請が義務化されることになったのでしょうか。

その背景には、「所有者不明土地」の増加があります。

「所有者不明土地」があると土地の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となり、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引や土地の利活用の阻害要因となったり、土地が管理されず放置され、隣接する土地への悪影響が発生したりするなど、様々な問題が生じています。

しかも全国のうち「所有者不明土地」が占める割合は九州本島の大きさに匹敵するともいわれています。

今後、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、ますます深刻化するおそれがあるため、その解決は日本の緊急の課題とされています。

その課題を解消させるために相続登記の申請を義務化することで、「所有者不明土地」の発生を予防しようと相続登記の申請が義務化されました。

その②:自分で相続登記を行う方法(時間と労力がかかります)

相続登記は、手続きを代行依頼することもできますが、自ら行うこともできないわけではありません。

相続登記を行う場合の流れは、以下のとおりです。

遺言書の有無の確認

法定相続人および相続財産の確認

遺産分割協議書の作成

相続登記申請

まずは「遺言書の有無」を確認する必要があります。遺言書がある場合には、その内容に従い、相続財産の分割を行わなければならないからです。

遺言書がない場合には、法定相続人で「遺産分割協議」を行い、どのように相続財産を分割するか話し合います。

そのためには、「法定相続人の確定」「相続財産の調査」が必要となります。

そして、もっとも時間が掛かるのが「法定相続人の確認」の中にある「戸籍の収集」です。

特に一番厄介なのが、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式です。

これは死亡記載のある戸籍のみならず、生まれた当時入っていた戸籍まで、被相続人の名前が載った戸籍全てが必要ということです。

1つの市区町村役場で全てがそろうケースもありますが、途中転籍を挟んでおり出生当時の戸籍までたどり着けなかった場合、他の市区町村役場にて更に遡って戸籍を取得する必要があります。

また、相続人の数、被相続人の戸籍状態(転籍、婚姻離婚、養子縁組の有無)により集める戸籍量が増え、比例して時間や労力がかかります。

「相続財産の調査」でも実際に相続する財産をすべて洗い出しが必要です。

詳しくは「相続税の基礎控除について【計算方法や注意点を解説します】その③:相続税がかかるかチェック(遺産総額の確認方法、計算方法は簡単です)」をご覧ください。

不動産については市区町村役場から毎年5月ごろに送られる固定資産税の「課税明細書」により被相続人の所有不動産を網羅的に把握できます。

「遺言書」または「遺産分割協議」において、不動産を相続することになった者は、「相続登記」の申請を行い、不動産の名義変更をします。

申請必要書類は、

  • 【遺言書がある場合】
  • 【遺言書がない場合】<遺産分割協議未了の間に法定相続分の登記を入れるケース>
  • 【遺言書がない場合】<遺産分割協議書により登記を入れるケース>

により必要な書類が異なります。

【遺言書がある場合】

  • 遺言公正証書(自筆証書・秘密証書遺言の場合には、検認済みのものが必要になります)
  • 被相続人の除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産を承継する相続人の現在戸籍
  • 不動産を承継する相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書

【遺言書がない場合】

<遺産分割協議未了の間に法定相続分の登記を入れるケース>

  • 被相続人の出生から死亡までの繋がりのとれる戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の現在戸籍
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産評価証明書

<遺産分割協議書により登記を入れるケース>

  • 被相続人の出生から死亡までの繋がりのとれる戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 不動産を承継する相続人の住民票
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印済みのもの)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書

事案によって他に必要な書類もあります。

申請書や記載例につきましては法務局「不動産登記の申請書様式について」をご覧ください。

そして申請書・必要書類が揃えば、いよいよ管轄法務局に登記申請を行いましょう。

申請の方法としては、法務局での窓口提出と郵送の2種類がありますが、郵送の方が手間がかからずおすすめです。

ただし郵送内容が内容だけに、必ず書留か赤色レターパックを使って送りましょう。

その③:相続登記に関連した相続人申告登記(2024年4月1日施行です)

相続登記の申請の義務化と同じ日(2024年4月1日)に施行される制度があります。

改正法のもとでは、不動産の所有者となったことを知ってから基本的に3年以内に相続登記しなければなりませんが、遺産分割協議が終わっていないなどの事情により相続登記をするのが難しいケースもあります。

そこで、先に「自分が相続人です」と法務局に申請することにより、上記の義務を履行したことにしてもらえるのが、「相続人申告登記」制度です。

相続人申告登記の申請があると、登記官はその不動産の登記に申出人の氏名や住所などの情報を付記します。この時点では正式な相続登記ではありません。

その後、遺産分割協議などを行って相続人が確定したら、その日から3年以内に正式な相続登記(名義変更)をすれば相続人は義務を履行したことになります。

2.相続登記をする上で注意すべき3つのこと

ここで注意すべき3つのことをお伝えします。

  • その①:遺言書がある場合
  • その②:固定資産税の「課税明細書」に記載されない不動産があります
  • その③:相続した不動産は相続開始日から3年10カ月以内に売却しましょう

その①:遺言書がある場合

まず、遺言書がある場合には、それが公正証書遺言なのか、自筆証書・秘密証書遺言なのか確認しましょう。

自筆証書・秘密証書遺言の場合には、検認手続きを経なければ法務局での登記申請が行えません。

なお、法務局に保管申請している自筆証書遺言については検認手続きが不要となります。

その②:固定資産税の「課税明細書」に記載されない不動産があります

被相続人が所有している不動産についても注意してください。

固定資産税が課税されない土地(私道など)や共有不動産など、固定資産税の「課税明細書」には記載されない不動産を被相続人が所有している場合もあります。

「課税明細書」には記載されない不動産について、遺産分割協議での話し合い、そして相続登記に漏れが出ないよう、遺産分割協議に際して事前に「名寄帳」などを取得して、被相続人所有のすべての不動産を把握し、遺産分割協議で誰が取得するのかを話し合って決め、不動産の漏れのない相続登記の申請をするようにしましょう。

なお、被相続人(亡くなった親など)が登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する「所有不動産記録証明制度」が令和8年4月までに施行となりました。

その③:相続した不動産は相続開始日から3年10カ月以内に売却しましょう

マンション売却利益が出た場合、すなわち購入費(取得費)よりも売却額が大きかった場合、譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税「譲渡所得×税率」で求められますが、肝心の譲渡所得は以下の計算式で算出されます。

譲渡所得の計算式「売却価格-(取得費用+売却費用)」となります。

詳しくは「マンションを売却するのにかかる諸費用が知りたい【内容や注意点を解説します】その②:譲渡所得税についてチェック(少し深掘りします)」をご覧ください。

この取得費に相続税の一部を上乗せできる特例があり、これを「相続税の取得費加算」といいます。

この特例の適用を受けることができれば、以下の計算式の通り、譲渡所得がその分少なくなり、譲渡所得にかかる譲渡所得税の節税になるというわけです。

「売却価格-(取得費用+相続税の取得費加算+売却費用)」

具体的には、相続開始日から3年10カ月以内に売却しないとこの特例の適用はありませんので注意が必要です。

売却に向けて動き出すのが遅いと相続開始の日から3年10カ月を経過してしまうので、相続税の取得費加算の適用を受けるためには、できるだけ早めに売却に向けて行動する必要があります。

まとめ:相続登記は義務化になりますので把握しておきましょう

ポイントをまとめます。

  • 相続登記の義務化について(2024年4月1日から義務化です)
  • 自分で相続登記を行う方法(時間と労力がかかります)
  • 相続登記に関連した相続人申告登記(2024年4月1日施行です)
  • 遺言書がある場合の注意点
  • 「課税明細書」に記載されない不動産がある場合の注意点
  • 相続した不動産は期限内に売却すれば節税になります

相続登記の義務化は2024年4月1日から施行されます。

しかも相続で不動産取得を知った日から3年以内に手続きを登記や名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となります。

不動産を相続したら、すぐに相続登記を行っておきましょう。

相続登記は、自分でも申請は十分できます。

しかし、状況によっては時間と労力がかかりますので相続に詳しい専門家に相談してみることをおすすめします。

ということで今回は以上です。

これを参考に将来的に不動産を相続する予定がある場合には少しずつ時間をかけて申請書類を準備しておくことをおすすめします。

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