相続での養子縁組の効果が知りたい【制度内容や相続税対策を解説します】

養子縁組が知りたい人
「相続での養子縁組した子は相続できると聞いたが内容や効果がわからないので知りたい。さらに相続税対策があればついでに知りたい。あと注意することがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. 養子縁組の制度内容や相続税対策が分かります【相続人への配慮も必要です】
  2. 養子縁組する上で注意すべき3つのこと

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「養子縁組の内容や効果が知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.養子縁組の制度内容や相続税対策が分かります【相続人への配慮も必要です】


正しい知識が必要です

  • その①:養子縁組の制度内容をチェック(種類や要件があります)
  • その②:養子縁組の養子の数の上限があります(悪用は厳禁です)
  • その③:養子縁組でのメリットや相続税対策をチェック(制度を活用しましょう)

上記のとおり

養子縁組が分かるようにここから詳しく解説していきます。

その①:養子縁組の制度内容をチェック(種類や要件があります)

「養子縁組」をおこなうことで、ご自身のお子さんではなく直接血の繋がりがない方と法的に親子関係を結ぶことができます。

よって、養子縁組が成立した時点から、養子になった方は実際のお子さんである実子(嫡出子)と見なされ、相続においても実子(嫡出子)と同じ権利を持ち、同じ割合を相続できることになります。

また、養子になった方は実親と養子縁組をした養親の両方の相続権を持つことになります。

養子縁組制度には、ごく一般的な「普通養子縁組」と、特別な事情がある場合に結ぶ「特別養子縁組」という2種類があります。

「普通養子縁組」は、養子先の親と法律上の親子関係が生じ、かつ、実親との親子関係が継続する制度です。実親との親子関係を断つことはないので、双方に大きな変化はなく、ごく一般的に活用される制度です。

【普通養子縁組の要件】

  • 養子が養親よりも年下であること。
  • 養親が20歳以上、もしくは結婚歴があること。
  • 養子が養親の叔父や叔母といった尊属でないこと。
  • 養親となる人が養子となる人の養親となる意思があること
  • 養子となる人が養親となる人の養子となる意思があること。
  • 後見人が被後見人を養子にする場合は家庭裁判所の許可を得ていること。
  • 結婚している人が未成年者を養子にする場合は夫婦共に養親になること。
  • 養親や養子となる人が結婚している場合は配偶者の同意を得ること。
  • 養子となる人が未成年者の場合は家庭裁判所の許可を得ていること。

「特別養子縁組」は、実親では育てられないなどのやむを得ない事情がある場合、一定の要件を満たす必要はありますが、養子となった者と実親との親子関係が法律上消滅するため、養子になった者は実親の相続人になることができない制度です。

【特別養子縁組の要件】

  • 実親の同意があること。
  • 夫婦共に養親になること。
  • 養子が15歳未満であること。(請求時)
  • 養親のうち少なくとも一人が25歳以上で、もう一人が20歳以上であること。
  • 実親の監護が困難または不適当であり子のために特別養子縁組が必要であること。
  • 特別養子縁組を請求して6ヵ月経過し、家庭裁判所に認められること。

その②:養子縁組の養子の数の上限があります(悪用は厳禁です)

養子人数については、民法上は何人いても問題ありません。

ただし、相続税法上においては課税を公平に行う為に法定相続人の養子数に下記のような制限があります。

  • 養親に実子がいる場合は、相続税法上の法定相続人に算入可能な数は、1人まで
  • 養親に実子がいない場合は、相続税法上の法定相続人に算入可能な数は、2人まで

※実子との親子関係が消滅した特別養子縁組の場合や連れ子で養子の場合は、この養子制限の対象にはなりません。

養子の数が制限され影響が出るのは、次の3つの人数です。

  1. 相続税の総算出額に関わる法定相続人の数
  2. 相続税の基礎控除額に関わる法定相続人の数
  3. 生命保険金や死亡退職金の相続税非課税枠に関する法定相続人の数

相続税対策として活用できるのは上記の「2と3」になりますので次の「その③」で詳しく説明します。

相続税法上の法定相続人に算入可能な養子数に制限があるのは、養子縁組を無制限に認めれば、法定相続人の数を相続税逃れのために悪用される可能性がありますので、この相続税課税回避行為を未然に防ぐ必要があるためです。

その③:養子縁組でのメリットや相続税対策をチェック(制度を活用しましょう)

将来の相続に備えて対策を考える場合、養子縁組の制度を活用する場合、どんなメリットがあるか確認をしていきましょう。

ただし、対策をすることが中心となり、養子縁組をされる方の気持ちや、本来相続人となる方の気持ちなどをおろそかにしないよう、十分に配慮しましょう。

【メリット】

・実子と財産を平等に分けられる

  養子縁組が成立すれば、実子と同じ権利を持つことが認められます。

  法律で決められた相続できる割合である法定相続分および、主張できる権利等もすべて実子と同等になります。

・法定相続人ではない方へ相続できる

  法定相続人ではないお孫さんや、第三者(例えば結婚相手の連れ子)に相続で財産を確実に譲りたい場合には養子縁組しておくと実子と同等に財産を引き継いでもらうことができます。

  血の繋がりがない方でも、お互いの同意があれば養子縁組は成立し、実子として財産を引き継いでもらうことが可能となります。

【相続税対策】

・相続税の基礎控除額を増やせる

  前述した「2. 相続税の基礎控除額に関わる法定相続人の数」の内容になります。

  相続税を計算する際に、相続税がかからない基礎控除という非課税枠があります。

  基礎控除額の計算式「3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )」です。養子縁組をすることで、この計算式の法定相続人の数が増えるため、非課税枠が大きくなります。

  ただし、相続税法上においては課税を公平に行う為に法定相続人の養子数に下記のような制限があります。

  • 養親に実子がいる場合は、相続税法上の法定相続人に算入可能な数は、1人まで
  • 養親に実子がいない場合は、相続税法上の法定相続人に算入可能な数は、2人まで

  ※実子との親子関係が消滅した特別養子縁組の場合や連れ子で養子の場合は、この養子制限の対象にはなりません。

・生命保険金や死亡退職金の相続税非課税枠を増やせる

  前述した「3.生命保険金や死亡退職金の相続税非課税枠に関する法定相続人の数」の内容になります。

  生命保険金及び死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」で計算した非課税枠が設けられています。こちらも基礎控除と同じように、無限に人数を増やせるわけではなく、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までと決まっています。

2.養子縁組する上で注意すべき3つのこと

ここで注意すべき3つのことをお伝えします。

  • その①:相続人の一人あたりの相続財産が減ります
  • その②:相続税が2割加算される場合があります
  • その③:養子縁組の解消は簡単ではありません

その①:相続人の一人あたりの相続財産が減ります

養子が増えると実子と同等の法定相続人が増える一方で、相続人で均等に財産を分割するため一人当たりの財産が少なることを意味します。

養子縁組できる人数には制限がありませんので(前述した、相続税法上の基礎控除等の算入可能な数には制限がありますので気をつけてください)養子が増えれば増えるだけ、一人が取得できる財産の割合が少なくなります。

相続人が知らなかった場合には揉める原因になりやすいです。

その②:相続税が2割加算される場合があります

本来はお子さんに相続しそのあとお孫さんに相続するという流れですが、相続する権利を一つとばしてお孫さんを養子にしてご自身の相続時に財産を相続させる場合には、相続税が2割加算されます。

また、法定相続人ではない第三者を養子にした場合なども、相続税が2割加算されます。取得できる割合は実子と同じとなりますが、相続税は高くなる点に注意しておきましょう。

詳しくは「相続税がいくらかかるのか【税率や計算方法を解説します】その②:相続人によっては相続税が2割加算されます」をご確認ください。

その③:養子縁組の解消は簡単ではありません

養子縁組については、無効事由、取消事由以外の理由で、養子縁組自体が無効または取り消されることはありません。

また,万が一その夫婦が離婚しても、養親子関係は解消されませんのでご注意ください。

養子縁組を解消するには、別途養親子である当事者同士で協議のうえ,役所に「養子離縁届」を提出することで、養親子関係を解消することができます。

無効、取消事由に該当せず、また、当事者間で話し合いが難航する場合は、家庭裁判所に「離縁調停」を申立てて、調停委員が間に入って離縁のための話し合いを仲介してくれます。

調停不成立となった場合には、離縁を求める訴訟を提起し、裁判上での解決を目指すことになります。

この場合、離縁が認められるのは、以下の場合に限られます。

  • 養親または養子が相手方から悪意で遺棄されたとき
  • 養親または養子が3年以上生死不明となったとき
  • その他、養子縁組関係を継続しがたい重大な事実があるとき

安易な気持ちで養子縁組をするようなことがないようにして下さい。

まとめ:養子縁組は相続税対策に効果はありますが慎重に考えて利用してください


ポイントをまとめます。

  • 養子縁組の制度内容をチェック(種類や要件があります)
  • 養子縁組の養子の数の上限があります(悪用は厳禁です)
  • 養子縁組でのメリットや相続税対策をチェック(制度を活用しましょう)
  • 養子縁組の注意点を把握しましょう

養子縁組によるメリットや相続税対策は大きな効果があります。

しかし、対策をすることが中心となり、養子縁組をされる方の気持ちや、本来相続人となる方の気持ちなどをおろそかにしないよう十分に配慮しましょう。

また、安易に養子縁組することで相続税対策はできたものの、家族間で争いが起きる火種になってしまっては元も子もありませんので慎重に考えて利用してください。

ということで今回は以上です。

養子縁組を利用して徹底した相続税対策をしたいという場合は、相続に詳しい専門家に相談することから始めることをおすすめします。

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