遺留分侵害額請求が知りたい【制度内容や手続き方法を解説します】

遺留分侵害額請求が知りたい人

「遺留分侵害額請求という言葉は聞いたことはありますが内容がわからないので知りたい。さらに自分で請求できるのかついでに知りたい。あと注意することがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. 遺留分侵害額請求の制度内容と請求方法【調停や訴訟まで進んでほしくないものです】
  2. 遺留分侵害額請求をする上で注意すべき3つのこと

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「遺留分侵害額請求の内容が知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.遺留分侵害額請求の制度内容と請求方法【調停や訴訟まで進んでほしくないものです】

令和元年7月1日に民法の改正がありました

  • その①:遺留分侵害額請求ができるのかチェック(対象者や割合が決まっています)
  • その②:遺留分侵害額請求の期限のチェック(期限も決まっています)
  • その③:遺留分侵害額請求の請求方法(話し合いで解決を目指しましょう)

上記のとおり

遺留分侵害額請求が分かるようにここから詳しく解説していきます。

その①:遺留分侵害額請求ができるのかチェック(対象者や割合が決まっています)

故人の財産というのは基本的に故人の意思に従って遺言書等で配分を決められます。

故人が生前に遺言書を残していた場合には遺言の内容が法律上のルールに優先することになります。

しかし、無制限にその行使を認めれば、相続人間の公平が損なわれたり、相続人の生活保障が不十分となったりする事態が生じることもあります。

そのようなことがないように配偶者・子供・親など、一定の範囲の相続人には相続財産の最低限の取得分が認められています。

この相続人側の利益を守るために一定の相続財産の取り分を保障する制度や権利を「遺留分」と言います。

「遺留分」を有する相続人の範囲と各相続人の遺留分の割合は次のとおりです。

「遺留分」を侵害する相続分の指定や遺贈等が行われても、それは当然に無効にはなりませんが、自己の遺留分を侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」を行うことで、その「遺留分」を侵害する遺贈や贈与の効力を否認して、「遺留分」の額に達するまでの財産を請求することができます。

例えば、相続人が配偶者のみの場合、配偶者には「遺留分」として遺産の2分の1を受け取る権利があります。

仮に遺言書に「全ての遺産を愛人に渡す」と書いてあったとしても、配偶者は遺産の2分の1を受け取る権利がありますので、愛人に対して「遺産の2分の1を受け取る権利があるので、遺産の2分の1を渡してください」と請求することが可能です。

このように他の相続人等に請求することを「遺留分侵害額請求」と言います。

令和元年7月1日から施行された改正民法により、従来の「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求」へと、権利の名称や内容が変更されました。

民法改正後の「遺留分侵害額請求」においては、遺留分侵害の精算は金銭の支払いによることで一本化されました。

改正前では現物返還による「遺留分侵害額請求」を行うと目的財産は請求者との「共有」になることが多く、目的物の円滑な処分に支障をきたしたり、共有関係の解消をめぐって新たな紛争が生じたりするなどの弊害がありました。

金銭請求に一本化することによって、複雑な共有関係が生じることがなくなり、より使い勝手の良い制度になりました。

その②:遺留分侵害額請求の期限のチェック(期限も決まっています)

「遺留分侵害額請求」は、遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効により消滅してしまいます。

また、相続開始の時から10年間が経過した場合、「遺留分侵害額請求」は除斥期間により消滅します。

したがって、消滅時効・除斥期間により「遺留分侵害額請求」が行使できなくなってしまうのでご注意ください。

その③:遺留分侵害額請求の請求方法(話し合いで解決を目指しましょう)

「遺留分侵害額請求」はまず相手方(法定相続分を超える財産を取得した相続人や受贈者)に対して意思表示をすることで行います。

相続は親族間の問題ですので、円満な解決を目指すためには、まずは話し合うことから始めましょう。

当事者同士で話し合って解決できれば、それが最もスムーズな解決方法となるでしょう。

話し合いで合意できれば、合意書を作成し、遺留分を侵害した相当額を相手に支払ってもらいます。

意思表示は口頭でも行えますが、期限の定めがある手続きですので内容証明郵便等により証拠を残すように行うのが一般的です。

内容証明郵便等で行うのは、権利を行使した証拠が残らないと争いが生じたときに権利者が1年間権利を行使しなかったとされて権利が消滅してしまう恐れがあるためです。

この請求に対して相手が応じない場合や合意できなかったりした場合には、家庭裁判所に調停の申し立てを行い、さらに調停も不調に終わった場合には訴訟を起こすことになります。

ちなみに「遺留分侵害額請求」の調査や請求の手続は、自分自身で行うこともできますが、相続財産の把握に漏れがあったときには適切にできません。

適切にできなかったために不利益を被ることがないよう「遺留分侵害額請求」をしたいと考えた場合は、まずは相続に詳しい専門家に相談してみることをおすすめします。

2.遺留分侵害額請求をする上で注意すべき3つのこと

ここで注意すべき3つのことをお伝えします。

  • その①:生前贈与などで特別受益がある場合の遺留分侵害額請求
  • その②:故人が複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っていた場合
  • その③:相続税以外の税金がかかることがあります

その①:生前贈与などで特別受益がある場合の遺留分侵害額請求

生前贈与などで特別受益がある場合には注意が必要です。

特別受益とは、被相続人から相続人に対して、遺贈された財産、及び、婚姻や養子縁組のため、若しくは生計の資本として生前に贈与された財産のことを言います。

この、生前に贈与がされて特別受益にあたる場合には、遺産を事前に受け取っていたとみなされる可能性があります。

「遺留分」とはこの相続人側の利益を守るために一定の相続財産の取り分を保障する制度や権利を言います。

そのため、例えば、「遺留分侵害額請求」をする側が、生前贈与など特別受益とみなされる財産を得ていたときは、遺産を事前に受け取っていたとみなされ、「遺留分」を認めなくても問題ないということになってしまう恐れがあります。

そのため、生前贈与など特別受益を受け取っていたとみなされると、「遺留分」が減額等される恐れがある点はご注意ください。

その②:故人が複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っていた場合

遺贈を受けた受贈者が複数いる場合や、生前贈与を受けた受贈者が複数いる場合、「遺留分侵害額請求」をすべき相手は誰になるのでしょうか。

この点については民法に規定があり、遺留分侵害額の相手となるのは

  1. 遺贈を受けた者に対して先に「遺留分侵害額請求権」をする。
  2. それでも「遺留分」を侵害されているときに、生前贈与を受けた者に対して「遺留分侵害額請求権」をすることになります。

これは、遺贈が相続財産からの贈与であるのに対し、生前贈与は、相続財産になる前に生前の時点で贈与されているので、遺贈の方がより遺留分を侵害していると考えられているからです。

その③:相続税以外の税金がかかることがあります

「遺留分侵害額請求」の時期や内容によっては、例えば譲渡所得税等、相続税以外の税金を支払うことになる場合があります。

また、「遺留分侵害額請求」を受けた側は、一度相続税の申告をしたものの、遺留分の支払いにより遺産の獲得状況が変わることになります。

このような場合には、申告をやり直し、一度納めた相続税の還付を受けることができます(=相続税の更生の請求)。

相続財産の更生の請求は、「遺留分侵害額請求」をされた翌日から4ヶ月以内に、申告書と添付書類を税務署に提出することで行うとされています。

まとめ:遺留分侵害額請求は「争族」の元凶です

ポイントをまとめます。

  • 遺留分侵害額請求ができるのかチェック(対象者や割合が決まっています)
  • 遺留分侵害額請求の期限のチェック(期限も決まっています)
  • 遺留分侵害額請求の請求方法(話し合いで解決を目指しましょう)
  • 対象となる財産に不動産が含まれているときは相続に詳しい専門家に相談をしましょう

配偶者・子供・親など、一定の範囲の相続人には相続財産の最低限の取得分が認められています。

この相続人側の利益を守るために一定の相続財産の取り分を保障する制度や権利を「遺留分」と言います。

「遺留分」を侵害されていることが判明した場合は、「遺留分侵害額請求」を行使できます。

この「遺留分侵害額請求」は行使されると相続人間で争いを激化させる危険性があります。

そうしない為にも円満に相続を行えるように事前の対策(生前対策)をしておく必要があります。

その為には、生前に被相続人は相続人や財産のチェックをしっかりと行い遺言書を作成する際には「遺留分」を考慮した内容で作成することをおすすめします。

特に対象となる財産の中に不動産が含まれているときには、適切な評価方法を用いて評価額を計算しなければなりませんので相続に詳しい専門家に相談してみることをおすすめします。

ということで今回は以上です。

これを参考に各相続人の相続財産の最低限の取得分を計算してみてください。

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