遺産分割協議書が知りたい①【必要なケースと不要なケースを解説します】

遺産分割協議書が知りたい人
「相続が発生しましたが被相続人(故人)の遺産を相続人でどのように分けるか決まっていません。分けるときに遺産分割協議書を作成した方がよろしいのか知りたいです。また、遺産分割協議書が不要なケースがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

1.遺産分割協議書の内容を確認【基礎知識を身に付けましょう】

2.遺産分割協議書の必要なケースと不要なケース【必ずしも必要ではありません】

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「遺産分割協議書が必要か不要か分からないので知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.遺産分割協議書の内容を確認【基礎知識を身に付けましょう】

相続人全員での話し合いです

遺産分割協議書とは

被相続人(故人)の財産について、相続人全員で遺産分割について話し合った結果を、書面にまとめたものが「遺産分割協議書」です。

預貯金や不動産、株式、債務などの相続財産について、誰がどれだけ相続するかを記載します。

遺産分割協議書に相続人の全員が署名して実印を押印することで、相続人どうしで遺産分割の内容に合意したことが証明されます。

遺産分割協議書の書式は決まっていませんが印鑑証明書も添付し、相続人全員が同じ物を1通ずつ所持します。

なお、遺産分割協議書を作成した後に、相続人単独でその内容を変更することはできません。

変更するには相続人全員の合意が必要になるなど、時間も手間もかかります。

慎重に内容を検討して合意する必要があります。

2.遺産分割協議書の必要なケースと不要なケース【必ずしも必要ではありませんが…】

それぞれのケースを解説します

【遺産分割協議書が必要になるケース】

① 遺産を法定相続分通りに分割しないケース

② 名義変更する遺産がある場合(不動産の相続登記や有価証券、自動車、船舶の名義変更など)

③ 金融機関で預金を引き出すケース

④ 相続税を申告するケース

⑤ トラブルを防止するケース

【遺産分割協議書が不要なケース】

① 相続人が1人のみのケース

② 遺言書のとおりに遺産分割するケース

③ 法定相続分のとおりに遺産分割するケース

まずは必要になるケースから解説します。

① 遺産を法定相続分通りに分割しないケース

相続について定める民法では、相続人が相続できる遺産の割合が定められています。

これを法定相続分といいます。

詳しくは「相続税の基礎控除について【計算方法や注意点を解説します】」ご覧ください。


法定相続分は上記の表のとおり定められていますが、相続人どうしで合意できれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することもできます。

遺産を法定相続分通りに分割しない場合は、遺産分割協議書を作成する必要があります。

② 名義変更する遺産がある場合(不動産の相続登記や有価証券、自動車、船舶の名義変更など

名義変更が必要なものとしては、不動産、有価証券、自動車、船舶などがあります。

名義変更する遺産があれば、多くの場合で遺産分割協議書が必要になります。

不動産の名義変更(相続登記)では、不動産を法定相続分とは異なる割合で分ける場合に遺産分割協議書の提出が求められます。

自動車の名義変更は、指定の用紙に相続人全員が記入するだけでよい場合もあります。

しかし、他に名義変更する遺産があれば、遺産分割協議書を作成しておく方がよいでしょう。

③ 金融機関で預金を引き出すケース

亡くなった被相続人の預金を引き出すときも、多くの場合で遺産分割協議書が必要になります。

被相続人の預金を引き出す手続きでは、指定の用紙に相続人全員が記入すれば、遺産分割協議書が不要な場合もあります。

しかし、手続きをする金融機関の数が多い場合は、金融機関ごとに指定の用紙に記入するほうが負担になります。

遺産分割協議書を作成して、手続きの都度、金融機関に提示すれば負担は軽減できます。

金融機関ごとに預金引き出しの具体的な手続きに違いがありますので取引している金融機関の窓口で確認することをおすすめします。

④ 相続税や特例を申告するケース

相続税を申告するときも、多くの場合で遺産分割協議書が必要になります。

特に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用する場合は、必ず遺産分割協議書を提出しなければなりません。

配偶者控除については「相続税の配偶者控除が知りたい【内容や適用させる要件を解説します】」をご覧ください。

小規模宅地等の特例については「小規模宅地等の特例が知りたい【制度内容や適用させる要件を解説します】」をご覧ください。

⑤ トラブルを防止するケース

遺産分割を口約束で済ませてしまうと、約束を破る相続人がいた場合に対抗することができません。

相続人どうしの仲が良くても、思い違いからトラブルが起きることもあります。

トラブルを防止したいときは、相続手続きで特に必要がなくても遺産分割協議書を作成しておくことをおすすめします。

不要なケースについて解説します。

① 相続人が1人のみのケース

相続人が1人のみのケースでは、その人が遺産をすべて取得する権利があるため、当然ながら遺産分割協議書は不要です。

② 遺言書のとおりに遺産分割するケース

亡くなった被相続人が遺言書を残していて、遺言書のとおりに遺産を分け合うときは、遺産分割協議書は不要です。

ただし、このケースについても、遺言によって財産を取得できる人と、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる内容で遺産分割をすることも可能です。

そのときは、遺産分割協議書が必要になります。

③ 法定相続分のとおりに遺産分割するケース

不動産を複数の相続人で共有し、それぞれの持分を法定相続分のとおりにする場合は、相続登記で遺産分割協議書を提出する必要はありません。

ただし、不動産を法定相続分で分けて共有することはおすすめできません。

不動産を法定相続分で分けるときの相続登記は、相続人であれば単独で手続きができます。

不動産を複数人で共有すると、将来処分したいときは子や孫へ世代が進むにつれ、共有者が増え合意を得ることが難しくなりトラブルになる恐れがあります。

まとめ:遺産分割協議書を作成しましょう

ポイントをまとめます。

遺産分割協議書の内容を確認【基礎知識を身に付けましょう】

遺産分割協議書の必要なケースと不要なケース【必ずしも必要ではありませんが…】

遺産分割協議書の内容や必要なケースと不要のケースを解説しました。

不要のケースでも相続人が複数いたり、相続人どうしのトラブルを防ぐためには遺産分割協議書の作成をおすすめします。

また、遺産分割協議書は個人でも作成できますが、遺産や法定相続人を調べ、不備のない遺産分割協議書を作るには手間や時間がかかります。

遺産分割協議書の作成に不安があれば、相続に詳しい専門家へ相談しましょう。

ということで今回は以上です。

分からないことがありましたら当事務所にお問い合せやご相談下さいませ。

行政書士おおこし法務事務所

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