財産目録が知りたい【目的や作成方法を解説します】

財産目録が知りたい人
「財産目録は聞いたことがありますが、どんな時に使用するのか分かりません。また、必要だった場合に自分で作成できれば作成方法を知りたいです。あと作成時に注意することがあれば教えて下さい。」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

1.財産目録の必要性と作成方法が分かります【相続トラブル防止の為に作成をオススメします】

2.財産目録を作成する上で注意すべき3つのこと

この記事を書いている私は、不動産歴18年ほど。その中で相続歴は10年ほどの行政書士です。

よくある質問で「財産目録は作成した方がいいのか知りたい」という疑問があります。その疑問を順番に解決していきましょう。

1.財産目録の必要性と作成方法が分かります【相続トラブル防止の為に作成をオススメします】

決まった書式はありませんがポイントは押さえましょう

その①:財産目録について(基礎知識や作成する場面、目的を解説します)

その②:財産目録を作成してみましょう(作成が難しい場合は専門家に依頼しましょう)

上記のとおり

財産目録の知識が身に付けられるようにここから詳しく解説していきます。

その①:財産目録について(基礎知識や作成する場面、目的を解説します)

【基礎知識】

財産目録とは、被相続人の財産が一覧で判別できるようにした表のことを言い、現預金や不動産といったプラスとなる財産の他に、借金などのマイナスとなる財産もすべて記入しておくことで、相続財産の内容を明確にすることができるものです。

また、財産目録には、相続財産の名称だけでなく、種類、数量、所在、価額など特定できるような情報を書き出します。

すべての財産を洗い出し、細かく記載することで、相続財産の内容を把握できるのです。

【財産目録を作成する場面】

財産目録は、遺言者が遺言書に添付するために作成したり、相続人が遺産分割協議の際に作成したりすることがあります。

財産目録の作成自体は義務ではありませんが、遺産分割調停の申し立てをする際には、家庭裁判所への提出が必要になります。

また、遺言執行者が選任された場合、遺言執行者は相続人に対して相続財産目録を作成して交付する義務があります。

【財産目録を作成する目的】

多くの場合、財産目録の作成は義務ではありませんが、相続人の相続時の負担軽減のためにも作成しておくことをおすすめします。

ここでは、財産目録を作成する目的について、具体的にご説明します。

◎相続手続きをスムーズに行うため

相続人が、相続税の申告の要否の判断、相続税の納付額の判断、相続対象財産の明確化などに役立ち、相続手続きがスムーズに進むため、相続手続きをスムーズに行うためには財産目録があるとよいです。

また、相続手続きを行うにあたって、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行いますが、遺産分割協議では、すべての財産を把握する必要があります。

そこで、被相続人の財産がどこにあるのかわからない、どれだけ財産があるかわからない、といったトラブルを防止するために財産目録を作っておくことが重要なります。

相続人が被相続人の財産を把握するには手間がかかることも少なくもなく、その際にあらかじめ財産目録があればスムーズに協議を行えます。

ちなみに、遺産分割協議が終わった後、相続人の知らない財産が追加で発覚したために、遺産分割協議を最初からやり直さなくてはならないこともあります。

相続人の負担を考え、このような事態を避けるためにも、生前に財産目録を作成しておくことをオススメします。

◎遺言書を作成するため

遺言書を作成する際は、財産目録も作成するべきです。

遺言書には、誰にどの財産を相続させるか具体的に記しますが、財産の把握が必要となるため、財産目録があればとても便利です。

また、多くの銀行と取引をしていたり、不動産を多く所有していたりする場合には、財産目録を作成することで自分がどれくらいの財産を所有しているのか把握しやすくなります。

◎相続税申告のため

相続税の申告が必要となった場合、相続税の申告書には必ず財産目録を作成する必要があります。

もし相続税の基礎控除を超える額の財産があることがわかっていれば、早めに作っておいた方が良いかと思います。

ちなみに、相続税の基礎控除を越えない場合でも下記の特例等を使用する場合には申告は必要となります。

・小規模宅地等の特例を使う場合
詳しくは「小規模宅地等の特例が知りたい【制度内容や適用させる要件を解説します】」ご覧ください。

・配偶者の税額軽減措置(1億6千万円)の適用を受ける場合
詳しくは「相続税の配偶者控除が知りたい【内容や適用させる要件を解説します】」ご覧ください。

その②:財産目録を作成してみましょう(作成が難しい場合は専門家に依頼しましょう)

財産目録の作成には、相続財産の調査を行います。

どんな相続財産があるのかを把握しておかなければ、財産目録を作成することはできません。

そのためにも、プラスの財産やマイナスの財産(借金など)を全て把握する必要があります
詳しくは「相続税の基礎控除について【計算方法や注意点を解説します】」ご覧ください。

ここで、財産目録の書式を見てみましょう。

引用元:家庭裁判所の相続財産目録記載例

「相続手続きをスムーズに行うため」「遺言書を作成するため」「相続税申告のため」といった目的から、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 財産の特定ができるよう詳細情報を記載する
  2. 価額はいつの時点で何を基準とした評価額かを明確にする
  3. 備考事項にも書いておく

【1. 財産の特定ができるよう詳細情報を記載する】

財産目録には被相続人のプラスの財産とマイナスの財産をもれなく記載します。

複数の財産があるケースでは、細かく情報を載せないと特定できないおそれがあります。

不動産ならば地番や家屋番号。

預貯金なら金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義。

株式や会員権なら株の銘柄やゴルフ場の名前、運営会社、会員番号。

その他、債券や債務がある場合には、その内容なども具体的に示せるものは具体的に書き、特定しやすくしておきましょう。

【2. 価額はいつの時点で何を基準とした評価額かを明確にする】

相続税の申告で必要なのは相続税評価額です。

つまり、財産の持ち主の死亡時点での評価額を使います。

ただし、作成時点が生前なら、記載するのは生きている間の評価額となるはずです。

生前に評価したものなのに、評価時点を明確にしないと、間違えた申告や遺産分割をしてしまうことになりかねません。

【3. 備考事項にも書いておく】

財産目録に書かれた財産は、亡くなった人が自由にできる財産とは限りません。

不動産ならば、他の人と共有になっていることもあります。

また、賃貸アパートやマンションなら、賃借の状況で評価が変わります。そのため、財産に特有の事情も書いておく必要があります。

財産目録には、特に決まった書式はありませんが、財産目録が正確に記載されていないとトラブルの元になりますから、適当に書くのは避けて下さい。

2.財産目録を作成する上で注意すべき3つのこと

ここで注意すべき3つのことをお伝えします。

その①:財産目録に記載されている財産が特定できること

その②:財産の内容に漏れがないようにすること

その③:自筆証書遺言の財産目録として使用する場合は所定の形式を満たすこと

その①:財産目録に記載されている財産が特定できること

預貯金であれば、「〇〇〇銀行の預金」ではなく「〇〇〇銀行 △△△支店 普通預金 口座番号□□□□□□」といったように、財産の明細は、金融機関名だけでなく支店名、口座種別、口座番号、必要であれば口座名義も明記するようにしましょう。

同じ金融機関でも複数口座を持っている人も多いため、記載の財産がどれを指しているのか特定できるようにすることがポイントです。

不動産についても、地番・地目まで正確に記載することが大切です。

また、持ち分があるなど特記すべきことも、備考としてあわせて記載しておくとよいでしょう。

その②:財産の内容に漏れがないようにすること

財産目録で、財産の一部の記載が漏れていた場合、その財産については遺産分割協議により分割内容を決めることになります。

たとえば、相続発生後に作成した財産目録を基準に遺産分割協議を行ったあとに、追加で相続財産が判明した場合、その分について再度分割協議を行う必要があります。

追加で判明した財産であっても、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なため、財産の記載漏れは思いがけない手間や時間がかかることにも繋がります。

財産目録を作成する際は財産内容をしっかり調査し、漏れのない財産目録とするよう心がけましょう。

その③:自筆証書遺言の財産目録として使用する場合は所定の形式を満たすこと

自筆証書遺言を作成する際、財産目録を添付することができます。

目録の形式は、特段の定めはありませんが、署名押印の必要があります。

2019年の民法改正により、必ずしも全文を自書する必要がなくなり、たとえばパソコン等で作成したり、預貯金については通帳の写しを添付する、土地については登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を添付したりすることもできます。

改正後の民法第968条第2項は,遺言者は,自書によらない財産目録を添付する場合には,その「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては,その両面)」に署名押印をしなければならないものと定めています。つまり,自書によらない記載が用紙の片面のみにある場合には,その面又は裏面の1か所に署名押印をすればよいのですが,自書によらない記載が両面にある場合には,両面にそれぞれ署名押印をしなければなりません。

このように、自筆証書遺言に添付するうえで一定のルールがあります。

このルールを充足していないと、遺言書として認められなくなってしまう場合もあるため注意が必要です。

ちなみに、押印について特別な定めはありませんので,本文で用いる印鑑とは異なる印鑑を用いても構いません。

まとめ:財産目録は円満な相続を実現させる為に必要なものです

ポイントをまとめます。

・財産目録の必要性と作成方法が分かります(相続トラブル防止の為に作成をオススメします)

・財産目録について(基礎知識や作成する場面、目的を解説します)

・財産目録を作成してみましょう(作成が難しい場合は専門家に依頼しましょう)

・財産目録を作成する上で注意すべき3つのこと

財産目録には決まった形式はなく、自分で財産を調べて作成することが可能です。

ただし、以下のケースに該当する方は専門家に作成依頼することをオススメします。

・複数の不動産がある

・相続人同士の仲が悪い場合

・財産管理をしている人の信用が低い

・公平性と客観性を重視したい

・完全に揉めるのを避けたい

また、遺言書を作成する際も、財産の分割方法について相談できますので効率的です。

ということで今回は以上です。

弊所でも財産目録の作成を行っておりますので、お困りでしたらお気軽にご相談くださいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

行政書士おおこし法務事務所

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